以下・已下(読み)いか

精選版 日本国語大辞典 「以下・已下」の意味・読み・例文・類語

い‐か【以下・已下】

〘名〙
① (数量、段階、優劣などを表わす語に付いて) その基準を含んでそれより下であること。また、基準になるものを含めないで、それより劣っていること。古くは「いげ」。⇔以上。〔文明本節用集(室町中)〕
※俳諧・三冊子(1702)白双紙「自由をふるひて世上にひろしといへども、中分いかにして」 〔論語‐雍也〕
② (代表として掲げる語に付いて) それを始めとしてそれ以外のもの。
読本・椿説弓張月(1807‐11)続「却説(かくて)尚寧王は〈略〉次の日又利勇等以下(イカ)近臣を引従し」
③ 今まで述べた以外のこと。これからあとに述べること。
滑稽本浮世風呂(1809‐13)三「此アアといへるは女の返詞也。もちろん江戸詞に限れり。以下(イカ)(をし)てしるべし」
④ (「おめみえいか(御目見以下)」の略) 江戸幕府の制度で、幕府直参の士のうち、将軍に謁見できない身分の者の称。御家人(ごけにん)。⇔以上
随筆甲子夜話(1821‐41)続篇「御三家用人以下公儀より御附人之分老中其外へ参候節開門送迎す」
[語誌](1)古くは「いげ」と呉音で読み、①の「文明本節用集」には「いげ」「いか」の両形が見える。「いか」が一般化するのは中世末頃か。
(2)平安時代以来の下文(くだしぶみ)の書留文言である「以下」は「もってくだす」と読まれるもので、この「以下(いか)」とは異なる。
(3)①については、現在では、数学法律などの場合、基準の数量を含むことになっており、含まない場合は「未満」を用いる。

い‐げ【以下・已下】

〘名〙
※続日本紀‐文武元年(697)八月庚辰「親王已下百官人等賜物有差」
※文明本節用集(室町中)「已下 イゲ イカ
平家(13C前)六「さる程に寿永二年になりけり。節会以下常の如し」
※天草本伊曾保(1593)イソポの生涯の事「ソノホカノ ゴコク ygueua(イゲワ) シダイノ タメニワ ママコノ ココロヂャニ ヨッテ」
③ 身分などの低いこと。下賤。
日葡辞書(1603‐04)「Igueno(イゲノ) モノ〈訳〉下等、下位の者」
[語誌]→「いか(以下)」の語誌

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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