伊和神社(読み)いわじんじゃ

精選版 日本国語大辞典 「伊和神社」の意味・読み・例文・類語

いわ‐じんじゃ【伊和神社】

兵庫県宍粟(しそう)市一宮町須行名にある神社。旧国幣中社。祭神は大己貴神(おおなむちのかみ)ほか二柱。延喜式内名神大社。播磨国一の宮。

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デジタル大辞泉 「伊和神社」の意味・読み・例文・類語

いわ‐じんじゃ【伊和神社】

兵庫県宍粟しそう市にある神社。祭神は大己貴神おおなむちのかみ少彦名神すくなひこなのかみ下照姫したてるひめ播磨はりま一の宮

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日本歴史地名大系 「伊和神社」の解説

伊和神社
いわじんじや

[現在地名]一宮町須行名

南流する揖保いぼ川がつくる谷間、南北に走る国道二九号沿いの西側に鎮座する。播磨国一宮で、一宮社などとも称された。旧国幣中社。現在の祭神は大己貴命を主神とし、少彦名神・下照姫命を配祀する。

〔祭神と信仰〕

古代においては「播磨国風土記」にみえる「伊和大神」を祭神としていた。同書によると、伊和大神伝承は揖保川流域を中心として宍禾・揖保・餝磨しかま神前かんざき託賀たかの各郡に点在しており、すでに大己貴命との習合の萌芽がみえるとはいえ、伝承などになお播磨土着の大神としての性格を色濃く残している。また同書神前郡多駝ただ粳岡ぬかおかの条に「伊和の大神と天日桙命と二はしらの神、各、軍を発して相戦ひましき」とあるように、新羅王子とされる天日桙命(天日槍命)の侵入を阻止するために戦った神としても有名で、伊和君ら播磨の豪族たちによって奉斎されていたと考えられる。伊和大神は大己貴神(大己貴命・大名持神・大汝神・葦原醜男神)と同一神であるといわれており、「新抄格勅符抄」所収の大同元年(八〇六)の牒にも「播磨伊和神」「伊和大名持神」の神名で記載されている。「三代実録」貞観元年(八五九)正月二七日条に「伊和坐大名持御魂神」、「延喜式」神名帳には宍粟郡七座のうちに「伊和坐大名持御魂神社」とある。これらの記載から伊和大神は伊和という地に鎮座する大名持神、あるいはその魂を祀った神社と考えられる。ただし創祀の当初から大名持神を祀っていたかという点については異論もある。

伊和神社の特殊神事として、六〇年目ごとの甲子の年に行われる「三つ山祭」と、その年から二〇年目ごとに行われる「一つ山祭」とがある。前者は神社の東方・北方・西方にある白倉しらくら花咲はなさき高畑たかはたの三山の霊を祀る神事で、この祭に限って本殿の扉を開いて遥拝する儀がある。後者には神社の北東にあるみや(岡城山)の山上に旗を立てて本殿から遥拝する儀がある。このような祭祀は、当社の信仰が本来はこれらの山の信仰であったことをうかがわせる。すなわち大名持神の信仰が入るまでの伊和神の信仰は、伊和地方の山の信仰として成立していたと考えられる。しかし前述したように、「伊和坐大名持御魂神」と九世紀以後の記録に記されていることも事実である。このことは伊和神の信仰の源流が当社付近の山の信仰でありながらも、のちに大名持神の信仰が加えられ、それと習合したところに伊和大神が誕生したことを物語っているといえよう。

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改訂新版 世界大百科事典 「伊和神社」の意味・わかりやすい解説

伊和神社 (いわじんじゃ)

兵庫県宍粟市の旧一宮町に鎮座。旧国幣中社。大己貴(おおなむち)神を主神とし,少彦名神,下照姫命を配祀。《播磨国風土記》に伊和大神と記されているが,伊和は地名で,《延喜式》には〈伊和坐大名持御魂(いわにいますおおなもちみたま)神社〉とある。808年(大同3)神封13戸を充てられ,881年(元慶5)正四位下に叙せられ,延喜の制では名神大社に列せられた。1249年(建長1)社殿が焼失したとき,軒廊御卜(こんろうのみうら)と仗儀が行われている。播磨国の一宮と仰がれ,一国鎮守の総社と尊ばれたが,近世には当地方が小藩に分封されたため,一時社運は衰えた。例祭は10月15日。特殊神事として61年目ごとの甲子年に行われる三ッ山祭,二百十日の1週間前の夕刻行う風鎮祭がある。また本殿背後に神鳥が飛来したと伝える霊石がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「伊和神社」の意味・わかりやすい解説

伊和神社
いわじんじゃ

兵庫県宍粟(しそう)市一宮町須行名(いちのみやちょうすぎょうめ)に鎮座。祭神は大己貴神(おおなむちのかみ)(大国主神(おおくにぬしのかみ))。相殿(あいどの)には少彦名神(すくなひこなのかみ)、下照姫命(したてるひめのみこと)を祀(まつ)る。『播磨国風土記(はりまのくにふどき)』には祭神を伊和大神と伝え、国造りの業を終え、伊和村(現社地)で亡くなったという。『延喜式(えんぎしき)』では名神(みょうじん)大社となり、中世以降は播磨国一宮として、新田義貞(にったよしさだ)、池田、松平各氏の武家、領主の崇敬が厚かった。1912年(明治45)国幣中社に列した。例祭10月15、16日。二百十日の約1週間前の夕方から、参拝者が境内の800余の土器(かわらけ)に油を注ぎ点火する風鎮祭、61年目甲子(きのえね)の年に行われる三ツ山祭は有名。本殿は入母屋造(いりもやづくり)で、北向きに建てられている。

[飯尾直樹]

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百科事典マイペディア 「伊和神社」の意味・わかりやすい解説

伊和神社【いわじんじゃ】

兵庫県宍粟(しそう)郡一宮町(現・宍粟市)に鎮座。旧国幣中社。大己貴(おおなむち)命(大国主命)をまつる。延喜式内の名神大社。播磨(はりま)国の一宮。例祭は10月15日。ほかに三ッ山祭(61年ごと甲子の年に行う),渡御祭(10月16日)がある。農業の神,福の神として信仰が厚い。
→関連項目一宮[町]

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デジタル大辞泉プラス 「伊和神社」の解説

伊和神社

兵庫県宍粟(しそう)市にある神社。延喜式内社。祭神は大己貴神(おおなむちのかみ)、少彦名神(すくなひこなのかみ)、下照姫命(したてるひめのみこと)。播磨国一之宮。

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