朝日日本歴史人物事典 の解説
伊藤次郎左衛門(14代)
生年:嘉永1.6.14(1848.7.14)
明治大正期の実業家。名は祐昌。慶長17(1612)年の清洲越(清洲から名古屋への移転)以来の呉服太物商人を祖とする尾張(名古屋)藩御用達商人の筆頭,伊藤次郎左衛門の14代。慶応2(1866)年家督を相続し,明治初期には尾張藩会計係,次いで大蔵省為替方に就任。明治10(1877)年第十一国立銀行設立にかかわり,14年伊藤銀行,26年伊藤貯蔵銀行を設立。伊藤銀行は大正・昭和恐慌期にも取り付けを免れ得た数少ない銀行のひとつで,経営の着実性とその半面ともいえる積極性に欠ける経営は,名古屋の伝統的商人の特質をよく体現している。15代目を継いだ4男祐民(1878~1940)は,周囲の懸念を払いのけて名古屋最初のデパート業への転換を推進,43年栄町角に店舗を建築し,大正14(1925)年商号を全店統一の「松坂屋」に改称するなどの積極経営を行った。<参考文献>岡戸武平『伊藤家伝』,名古屋市教育委員会編『明治の名古屋人』
(西村はつ)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報