会釈(読み)えしゃく

精選版 日本国語大辞典 「会釈」の意味・読み・例文・類語

え‐しゃく ヱ‥【会釈】

〘名〙
① (━する) (「和会(わえ)通釈」の意) 仏語。一見矛盾しているように思われる異義、異説の相違点を掘り下げて、その根本にある、実は矛盾しない真実の意味を明らかにすること。会通(えつう)。和会。融会(ゆうえ)
※真如観(鎌倉初)「凡そ諸経論の文は、人の信により、意楽(いげふ)によって、様々の会釈(ヱシャク)をのぶる者也」
② (━する) 転じて、あれこれ思い合わせて、納得できるような解釈を加えること。
※令集解(868)公式「義云。〈略〉未知、与此条若為会釈」
無名抄(1211頃)「予こころみにこれを会尺す」
③ (━する) 一方的でなくいろいろな方面に気を配ること。あれこれの事情を考慮に入れること。配慮。斟酌(しんしゃく)。思いやり。心づかい。
※浜松中納言(11C中)一「人の心情けなくゑしゃく少なきところも、かかる世界におはせんも恐ろしう」
④ (━する) あれこれとやむを得ない事情を説明すること。言いわけ。申し開き。
愚管抄(1220)六「又一定(いちじょう)をとはんをりは、両方に会尺(ゑしゃく)をまうくる由の案どもにて」
※源平盛衰記(14C前)一二「静憲法印院宣の御使にて様々会釈(エシャク)申しければ」
⑤ (━する) 儀礼にかなった応対。儀礼的な口上を述べること。あいさつ。
殿暦‐承徳元年(1097)二月三日「申時許、芟姫君御髪〈略〉別当息少将実隆・兵衛佐実行等相伴、同申慶、相逢言談、為会釈也」
※宇治拾遺(1221頃)一一「大矢の左衛門尉致経、あまたの兵(つはもの)を具してあへり。国司会尺する間致経がいはく」
⑥ あいさつ料。礼銭。
※本福寺跡書(1560頃)「この二色を堅田新在家御坊御建立の御会釈に召されつけたり」
好意を示す応対、態度。愛想。「えしゃくこぼす(=愛敬ある様子をする)」「えしゃくこぼる(=愛敬が顔に現われる)」
日葡辞書(1603‐04)「Yexacuno(エシャクノ) ヨイ ヒト」
⑧ (━する) ちょっと頭を下げて礼をすること。軽いお辞儀。一礼。えさく。
浄瑠璃仮名手本忠臣蔵(1748)四「役目なれば罷通ると、会釈(ヱシャク)もなく上座に着ば」
人情本春色梅児誉美(1832‐33)四「藤兵衛が彼(かの)侍に会釈(ヱシャク)すれば、本田次郎も打うなづき」

え‐さく ヱ‥【会釈】

※宇津保(970‐999頃)吹上上「わが君のおほんえさくのすぢ侍らば、やすくしおもひいたること」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「会釈」の意味・読み・例文・類語

え‐しゃく〔ヱ‐〕【会釈】

[名](スル)《もと仏教語で、混乱した内容を、前後照合して意味が通じるようにする意の「和会わえ通釈」の略》
軽くあいさつや礼を交わすこと。また、そのあいさつや礼を示す所作。「会釈してすれ違う」「会釈を返す」
相手に心配りをすること。思いやり。斟酌しんしゃく。「遠慮会釈もなく割り込む」
「一国独立の為とあれば試みにも政府を倒すに―はあるまい」〈福沢福翁自伝
事情を納得して理解すること。趣旨をのみこむこと。
「之を尺度として、―もなく百般の著述を批評するをいうなり」〈逍遥・批評の標準〉
事情を説明したりすること。
「入道朝家を恨み奉る由聞こえしかども、静憲法印院宣の御使ひにて様々―申しければ」〈盛衰記・一二〉
(多く、あとに「こぼる」「こぼす」などを伴って用いる)打ち解けて愛敬のあること。また、その所作。
「―こぼして、御機嫌取りの追従顔」〈浄・振袖始〉
[類語]お辞儀目礼黙礼最敬礼叩頭一礼敬礼答礼握手一揖叩首低頭拝礼

あしらい〔あしらひ〕

応対すること。あつかい。もてなし。「ひどいあしらいを受けた」
組み合わせて趣を添えること。また、そのもの。取り合わせ。「あしらいにパセリを添える」
(「会釈」とも書く)芸能の型。また、手法。
で、相手役に向き直って応対する型。
㋑能の囃子はやしの一。
狂言に奏する囃子。狂言アシライ。
長唄で、間拍子まびょうしに合わせて、自由な形で即興演奏する手法。
連句付合つけあい手法の一。前句の事物を取り入れた付け方。→七名八体しちみょうはったい

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

今日のキーワード

黄砂

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android