伴部(読み)とものべ

精選版 日本国語大辞典 「伴部」の意味・読み・例文・類語

とも‐の‐べ【伴部】

〘名〙 配下の者。部下
万葉(8C後)六・九七一「山の極(そき) 野の極見よと 伴部(とものへ)を あかちつかはし」

はん‐ぶ【伴部】

〘名〙 (「はんふ」とも) =とものみやつこ(伴造)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「伴部」の意味・読み・例文・類語

とも‐べ【部】

律令制で、諸官司に分属され、品部しなべ雑戸ざっこを管理した役人。とものみやつこ。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「伴部」の意味・わかりやすい解説

伴部 (ともべ)

律令制諸官司に配属された番上下級官職の一つ。伴部は〈友造(とものみやつこ)〉と《令集解》の諸説で注釈されているように,律令制前の部(伴造あるいは百八十部といわれたもの)を編成して四等官の下に設置したもの。品部(しなべ),雑戸(ざつこ)を従える場合と伴部のみの場合があるが,多くは世襲的に特定の仕事を行う人たちである。中務省,宮内省の被管官司や大蔵省などに属するが,その出身母体により,次の三つに分類される。(1)名負(なおい)氏(世襲的な職業氏)から選ばれるもの。神祇官の神部(かんべ),主殿(とのも)寮の殿部(とのもり)/(とのべ),衛門府の門部(かどべ),囚獄司や東西市の物部(もののべ)などがこれにあたる。このうち殿舎や行幸時の施設の維持管理を担当する主殿寮の殿部は名負氏の日置,子部,車持,笠取,鴨の5氏から選ばれる。(2)原則として伝統的な氏族から選ばれることには違いないが,(1)ほど固定的なものでないものに,内礼司の主礼,木工寮の工部,画工司の画部(えかきべ),内蔵寮,大蔵省の蔵部などがある。(3)品部,雑戸より選ばれるものとして,馬部(左右馬寮),漆部(ぬりべ)(漆部司)のほか,履の製作にあたる百済手部(くだらのてひと),革作りの狛部(こまべ)(内蔵寮,大蔵省),兵器などの製作にあたる雑工部(造兵司典鋳司),吹部(ふえべ)(鼓吹司),鍛部(鍛冶司),泥部(はつかしべ)(土工司)などがある。

 伴部は上記のような世襲的な仕事を行う課役を免除された。代償として伴部は史生,使部などの番上官とともに式部の判補で選任される。
執筆者:

伴部 (ばんぶ)

伴部(ともべ)

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

山川 日本史小辞典 改訂新版 「伴部」の解説

伴部
ともべ

「とものみやつこ・ばんぶ・はんふ」とも。律令制下,諸官司の下級技術官人の総称。雑任(ぞうにん)の一つ。式部判補で任用され,番上で勤務して考課をうけ,課役を免除された。内蔵(くら)寮の蔵部(くらべ)・百済手部(くだらのてひとべ)などのように部の字を付して称される。多くは品部(しなべ)・雑戸(ざっこ)をともない,種々の現業部門の作業にあたった。特定の氏族から任用される者が多く,その氏を負名氏(なおいのうじ)という。また品部・雑戸から任用されることもあった。大化前代の伴造(とものみやつこ)のうち,上級者が四等官や才伎長上(さいぎのちょうじょう)などに,下級者が伴部に編成されたと考えられているが,品部との区別が明らかでないものや,令制で新しく編成されたものなどもある。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「伴部」の意味・わかりやすい解説

伴部
ともべ

大化改新により,豪族の私有から放れ,律令制官司のもとに再編成された品部 (ともべ) や雑戸などの職業集団を率いたもの。改新前の伴造 (とものみやつこ) のうち,下級のものが伴部となった。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

黄砂

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android