伽倻琴(読み)カヤキン

デジタル大辞泉 「伽倻琴」の意味・読み・例文・類語

かや‐きん【××倻琴/加×耶琴】

朝鮮楽器そうに似た12弦の撥弦はつげん楽器新羅琴しらぎごと

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改訂新版 世界大百科事典 「伽倻琴」の意味・わかりやすい解説

伽倻琴 (かやきん)

朝鮮の12弦のロング・チター属の撥弦楽器で,可動柱を用いて調弦する一種の箏(そう)。加耶琴とも書く。雅楽用(風流加倻琴とも法琴ともいう)と民俗楽用(散調伽倻琴)の2種類ある。雅楽用は宗廟の祭礼楽と宮廷の宴礼楽の合楽(管絃(弦))や弦楽で用いられ,3種の調弦法がある。全長約167~170cm,幅約33cm。一本の桐材の裏側をくり取って作った胴と尾端に羊耳形の別木からなる。絹弦は,木綿の青いより紐(染尾)の先のループにかけて張る。朝鮮では新羅の真興王代(540-576)に加耶の楽師于勒(うろく)が伽倻琴曲12曲を作したとの所伝がある。また9世紀に日本に伝来したものが新羅琴として正倉院に残存する。民俗楽用は,全長約144~148cm,幅約22~26cmでやや小型で,羊耳形はなく箱作りの胴。調弦法も異なり,独奏曲の散調(さんぢよう)(数種のリズム型による一種の変奏曲),伽倻琴併唱(パンソリの名唱曲や短歌を歌いながら演奏),巫楽合奏などで奏する。演奏法は,楽器の頭部を右ひざにのせ,右手の親指人差指中指素手で弾く。左手は押手(おしで)やビブラートなどのために用いる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「伽倻琴」の意味・わかりやすい解説

伽倻琴
かやきん / カヤグム

朝鮮半島の代表的な古典弦楽器。12弦の箏(そう)。『三国史記』(1145)には伽倻国の嘉実(かじつ)王が唐の楽器をまねてつくったとあるが、三韓(さんかん)時代からの弦楽器「琴」を改良したものとみられる。日本には奈良時代に紹介され「新羅琴(しらぎごと)」として正倉院に3面保存されている。伽倻琴には、雅楽に使われる法琴(別名風流伽倻琴)と、散調(さんじょう)や民俗楽で奏される散調伽倻琴の2種がある。法琴はキリの一木を船形にくりぬいてつくられ、鳳尾(ほうび)の先端には染尾(せんび)を結ぶ羊耳頭(緒止め)がある。後者には、表にキリ、裏にクリの木などの硬い材質を使った共鳴板があり、羊耳頭は平凡な板状形に退化している。演奏は、楽器の頭部を膝(ひざ)の上にのせ、それぞれ撚(よ)りの異なる12の絹糸の弦を直接右手(おもに親指、人差し指、中指)で摘み、弾く。左手は押手やビブラートなどの技法に用いる。散調伽倻琴は約140年前につくられ、法琴より小型で長さは150センチメートル前後、近年は現代音楽に多く用いられる。音域は2オクターブと5度である。

[原谷治美]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「伽倻琴」の意味・わかりやすい解説

伽倻琴
かやきん
kayagǔm

朝鮮のツィター属弦楽器。雅楽用は長さ約 167cm,幅約 33cm。桐材の一木で裏側をくりぬき,表に絹の 12弦を張る。尾部に羊の耳に似た羊耳頭をもつ。 12個の柱を立て,左手で押手やビブラートをつけ,右手の親指,人差指,中指で弾く。6世紀頃伽 倻国で作られたといわれ,日本へは奈良時代に伝来し新羅琴と呼ばれた。民間楽用はやや小ぶりで箱造り,羊耳頭はない。

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世界大百科事典(旧版)内の伽倻琴の言及

【于勒】より

…大加耶(高霊)の人。伽倻琴(かやきん)(十二弦琴)の作曲者として12曲がその作に仮託された。伝説に,新羅の真興王による加羅併合(562)のころ,新羅に投じて国原(忠州)に住み,琴・歌・舞を教えたという。…

【箏】より

…柱を用いない琴(きん)とは異なるが,日本や朝鮮では,古くから〈琴〉の字をあてて箏類をもさすことがある。単に箏と称するもののほかに,同類の楽器として,中国の瑟(しつ),朝鮮の伽倻琴(かやきん),大箏(たいそう),牙箏(がそう),日本の和琴(わごん),モンゴルのシトク(ヤトク,ヤタグともいう),ベトナムのダン・チャンなどがあり,撥弦楽器が主流であるが,牙箏のように擦奏するものもある。
[中国]
 中国の箏は雅楽用でなくもっぱら俗楽に用いられてきた。…

【朝鮮音楽】より

…馬韓では5月の種まきの後と10月の収穫の後に,群衆による歌舞を行うと伝えられており,この時代の歌舞による祭事は,いずれも,今日の農楽や〈クッ〉と呼ぶ神事と関係があると考えられている。楽器についての記録は,弁韓と辰韓に,今日の代表的な弦楽器の伽倻琴玄琴の祖形と見られる(しつ)に似たチター属楽器があったことを伝えており,これは,朝鮮民族が早くから,長方形の弦楽器を好んで使用していたことを物語っている。(2)三国時代(4~7世紀後半) 高句麗,百済,新羅それぞれに異なる特色があらわれる。…

※「伽倻琴」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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