位封(読み)イフ

デジタル大辞泉 「位封」の意味・読み・例文・類語

い‐ふ〔ヰ‐〕【位封】

大宝令の制で、三位さんみ以上の諸王諸臣位階に応じて賜った食封じきふ。→位禄いろく

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精選版 日本国語大辞典 「位封」の意味・読み・例文・類語

い‐ふ ヰ‥【位封】

〘名〙 令制で、親王以下三位(さんみ)以上の諸臣の位階に応じて賜わった食封(じきふ)一品(ぽん)の八〇〇戸から四品の三〇〇戸まで、正一位の三〇〇戸から従(じゅ)三位の一〇〇戸までの等級があった。慶雲三年(七〇六)には、四位までに改めたが、大同三年(八〇八)には令制に復した。
※続日本紀‐慶雲三年(706)二月庚寅「案令、諸王諸臣位封」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「位封」の意味・わかりやすい解説

位封
いふ

奈良・平安時代に、諸王、諸臣の位階に応じて支給された封戸(ふこ)で、律令(りつりょう)官人らの経済的特権一つ。親王の品階に応じて支給した品封(ほんぷ)に同じ。646年(大化2)大夫(たいふ)以上に食封(じきふ)を給したのに始まる。大宝令(たいほうりょう)では三位(さんみ)以上に300~100戸を支給すると規定し、706年(慶雲3)に支給額を令制のほぼ2倍とした。またこのとき、従来位禄(いろく)と称して、絁(あしぎぬ)、綿、布、庸布(ようふ)を支給されていた四位の者にも位封を与えることにしたが、808年(大同3)支給額やその範囲は令制に復した。女子男子の2分の1だが、妃、夫人、嬪(ひん)の品位封は男子と同額。『延喜式(えんぎしき)』『拾芥抄(しゅうがいしょう)』にも位封支給額が記されている。ただし後者の支給額は令制などの規定と相違するが、それが、いつ、何に由来したか明らかでない。なお位封の制は漸次解体し、のち荘園(しょうえん)形成の原因の一つとなった。

[米田雄介]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「位封」の解説

位封
いふ

律令制下の給与の一つで,諸王・諸臣に対し位階に応じて支給した食封(じきふ)。親王に対するものは品封(ほんぷ)という。女子は原則として男子の半給。浄御原令制下では,のちの五位以上相当まで支給されたが,大宝禄令では,正一位に300戸,従一位に260戸,正二位に200戸,従二位に170戸,正三位に130戸,従三位に100戸と,三位以上に限られた。しかし706年(慶雲3)三位以上はほぼ2倍に増額され,正四位に100戸,従四位に80戸を支給するよう改められた。808年(大同3)に再び令制に復した。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「位封」の意味・わかりやすい解説

位封
いふ

律令制で,親王,諸王,諸臣の位階に応じて支給された封戸 (ふこ) 。親王は一品の 800戸~四品の 300戸 (品封) ,諸王,諸臣は正一位の 300戸~従三位の 100戸であったが,一時四位にも支給された。女子は男子の2分の1,妃,夫人,嬪 (ひん) は同額であった。平安時代末期には有名無実となった。

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旺文社日本史事典 三訂版 「位封」の解説

位封
いふ

律令制において,親王・公卿の位階に応じて与えられた封戸 (ふこ) (親王の場合は品封という)
四品以上の親王と三位以上の公卿に与えられ,四位以下は位禄が給与された。大化改新に始まるとされ,律令貴族の特権の一つとなったが,平安末期,律令制崩壊とともに行われなくなった。

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世界大百科事典(旧版)内の位封の言及

【封戸】より

…大宝令での封戸の規定は養老令のものとほぼ同じだとされているので,以下養老令文によってその大要をのべる。 封戸には皇親の品位によって支給されるもの(品封(ほんぷ)),役人の位階によって支給されるもの(位封(いふ)),職掌によるもの(職封(しきふ)),特別に天皇の命令で支給するもの(功封や別勅の賜封,増封など)があった。また寺への封戸(寺封)の支給は天皇の勅があった場合のみみとめられ,5年間に限って支給された。…

※「位封」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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