住めば都(読み)スメバミヤコ

デジタル大辞泉 「住めば都」の意味・読み・例文・類語

めばみやこ

どんな所でも、住み慣れるとそこが居心地よく思われてくるということ。
[補説]住むのなら都会が良いの意で使うのは誤り。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

ことわざを知る辞典 「住めば都」の解説

住めば都

都から遠く離れた田舎も、実際に住んで慣れ親しむと、さほど不便とも思わなくなり、その地の風物人情のよいところもわかって、むしろ離れがたくなる。転じて、厳しく辛い境遇も、慣れてしまえば苦にならず、かえって気楽に感じられることのたとえ。

[使用例] 順吉はふとその気になって職業紹介所へ行って、炭坑夫の募集に応じた。一生のうちに北海道へ来るようなことがあろうとは夢にも思っていなかったが、そういうはめになったのである。夕張にきてしばらくは殺風景な、ただ寒いばかりの処だと思った。いまは、住めば都だと思っている[小山清*夕張の宿|1952]

[使用例] 「東京と大阪だけが、人の住むとこやあらへん、北海道かて九州かて、住めば都や。そうや、四国の丸亀には友達もおるわ、な、二人で駆け落ちしょ」[森田誠吾魚河岸ものがたり|1985]

[解説] 「住めば」を住むならばと解して東京がよいとするのは、誤解です。「住めば」は、「住む」の已然形に助詞「ば」がついた形。口語仮定形に相当しますが、単なる仮定ではなく確定した条件を示し、「住んでしまえば」というニュアンスです。事情があって都から離れた地に住み、ある程度長く過ごした者の体験にもとづく表現といってよいでしょう。
 中世から使われた表現で、背景には富や権力の集中する華やかな都と、貧しくひなびた田舎の対照的な生活がありました。都人は田舎暮らしをいとい、近代になっても転勤などで地方転住することを「都落ち」とする風潮が残りました。ことわざには、そうした世間常識に抗して生きる力が感じられ、地方に赴く人々を励まし慰める役割も果たしています。

〔朝鮮〕살아가면 고향(住んでいけば故郷)

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