何分(読み)なにぶん

精選版 日本国語大辞典 「何分」の意味・読み・例文・類語

なに‐ぶん【何分】

[1] 〘副〙
① 事態の雑多なさまを表わす。いろいろと。さまざまに。なんとも。
浮世草子・好色五人女(1686)二「何分御やっかいに成まして」
② これと断定はできないが漠然と、あるいは、あえてぼかしながら、自らの判断を述べるときに用いる。どうやら。どうも。
滑稽本浮世風呂(1809‐13)四「其スウススウとすすり込む音が何分気障(きざ)だ」
③ 他のことよりも優先する事柄いかんともしがたい事情を述べて、弁解などをするときに用いる。何しろ。何せ。
※椿椿山宛渡辺崋山書簡‐天保一一年(1840)一一月三日「何分学浅識隘候間、棟撓み可申存候」
④ 相手の判断・裁量にまかせて依頼・懇願する気持を表わす。どうかしかるべく。なにとぞ。
歌舞伎お染久松色読販(1813)序幕「何分売払ってくれろとの頼み」
[2] 〘名〙 (「なにぶんの」の形で)
① 特定しない事柄を漠然と示す。なんらか。「なにぶんの指示があろう」
② わずかな数量を漠然と示す。なにがし。「なにぶんの寄付をする」

なん‐ぶん【何分】

〘副〙 「なにぶん(何分)」の変化した語。
梅津政景日記‐慶長一七年(1612)八月二六日「作右衛門お中を分度と申候て、尤なんふんにもと申候間」

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デジタル大辞泉 「何分」の意味・読み・例文・類語

なに‐ぶん【何分】

[名]
はっきりしない内容を漠然と表す。なんらか。「いずれ何分沙汰があるだろう」
あまり多くない数量を漠然と表す。いくらか。なにがし。「何分の御寄付をお願いいたします」
[副]
適切な処置を依頼するときに用いる。どうぞ。何とぞ。「何分よろしくお願いします」
どんな事情よりも優先する事柄を述べて、弁解などをするときに用いる。何しろ。何せ。「何分この天気ですので、船は出せません」
[類語]1平になにとぞ是非どうぞどうか願わくはくれぐれもなんとかぜひともまげてひとつしんからこころから衷心返す返す強いて敢えて努めてできるだけなるたけなるべく可及的必ずきっと絶対何としてもどうしても是が非でもたって必ずや必定否が応でも否でも応でもいやでもいやとも是非ともとくととっくり重ね重ね2とにかく何しろ何せ何分にもなんにせよともかくともかくもともあれとまれとにもかくにもそれはともあれ畢竟ひっきょう結局矢張り所詮しょせんどの道何れにしても結句ついとどの詰まり詰まるところ帰するところせんずるところ要するにいずれどうせつまりとうとういよいよ挙げ句挙げ句の果て差し詰め究竟きゅうきょう果ては何と言ってもどっち道もはや遅かれ早かれ善かれ悪しかれ

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