何時か(読み)いつしか

精選版 日本国語大辞典 「何時か」の意味・読み・例文・類語

いつ‐し‐か【何時か】

[1] 〘副〙 (代名詞「いつ」に、間投助詞「し」および係助詞「か」が付いてできたもの)
① (「いつしかと」の形で用いることが多い) 「いつ…する(できる)だろうか」という気持から、ある物事実現を待ち望む気持を表わす。いつかいつかと。すぐにでも。早く。
※続日本紀‐天応元年(781)二月一七日・宣命「伊都之可(イツシカ)病止(い)えて参り入りき」
※土左(935頃)承平五年一月一六日「いつしか御崎といふ所わたらんと」
② ある物事が気づかないうちに、または予想以上に早く実現したさま、時の経過の不明なことを表わす。いつのまにか。早くも。
蜻蛉(974頃)下「うぐひす許ぞいつしか音したるを」
唱歌・蛍の光(1881)「いつしか年も、すぎのとを、あけてぞけさは、わかれゆく」
過去および未来の事がらに関して、その事のあった、または、ある時が特定できないことを表わす。いつであったか。そのうちいつか。
※千載(1187)恋一・六四三「おもふよりいつしかぬるるたもとかな涙ぞ恋のしるべなりける〈後二条関白家筑前〉」
④ (下に打消を伴って用いる。近世用法) いつまでたっても。いつになっても。
咄本・諺臍の宿替(19C中)一〇「それを両方から、あからさまにいふてゐましては、いつしか話しになるためしはござりませぬよって」
[2] 〘形動〙 時期があまりにも早いさま。早すぎること。
※浜松中納言(11C中)二「さりける事のありけるよと、聞かれん事もいつしかに侍り」
[語誌](1)上代での原義「いつになったら実現するだろう」という推量的自問は、強意の「し」によって、実現を強く待ち望む気持、「早く実現してほしい」「早く実現したい」という願望をも表わすようになる。
(2)中古には、事態完了について使用され、②のように事態の実現が予想以上に早く、気づく間もなかったことを表わすことが多くなり、やがて形容動詞の用法が派生した。

いつ‐か【何時か】

〘副〙 (代名詞「いつ」に助詞「か」の付いてできた語)
① 未来および過去の事がらに関して、それがどの時点であるかはっきりしないことを表わす。また、反語を表わす場合もある。いつ…した(…する)であろうか(いや、そんなことはない)。
万葉(8C後)一四・三四四一「ま遠くの雲居に見ゆる妹が家(へ)に伊都可(イツカ)到らむ歩め吾(あ)が駒」
※宇治拾遺(1221頃)一〇「いつかさる者候ひつる」
② 物事の変化の起こる、または、起こった時の不明なことを表わす。気がつかないうちに。いつのまに。いつしか。
※伊勢物語(10C前)八一「塩釜にいつか来にけむ朝なぎに釣する舟はここに寄らなむ」
③ 未来の不定な時を表わす。遅かれ早かれ。いずれそのうち。早晩。〔観智院本名義抄(1241)〕
※車屋本謡曲・元服曾我(室町中)「うつを限の秋ごろも、恨みをいつか晴らさむ」
※即興詩人(1901)〈森鴎外訳〉歌女「その夢は早晩(イツカ)醒むべし」
④ (「いつかも」「いつかの」などの形でも用いられる) 過去の不定な時を表わす。どういう時点であったか。いつぞや。
※門三味線(1895)〈斎藤緑雨〉「過日(イツカ)も路に八百屋の荷が転覆(ひっくりかへ)りて」
※婦系図(1907)〈泉鏡花〉前「だって、主税さん、先年(イツカ)私の誕生日に」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「何時か」の意味・読み・例文・類語

いつ‐か【何時か】

[副]
未来の不定の時を表す。そのうちに。「何時かお会いしたい」「あの国には何時か行ってみたい」
過去の不定の時を表す。いつぞや。以前。「何時か来た道」「何時か読んだ本」
時がたつのに気がつかないさま。いつのまにか。「何時か日が暮れていた」
過去・未来の事柄について、それがいつであったかという疑問、または反語の意を表す。いつ…したであろうか。
「―若やかなる人など、さはしたりし」〈・二八〉
[類語](1そのうちいずれ今にやがて遅かれ早かれ遠からず早晩近日ちかぢか追って他日後日不日又の日近くじきすぐ直ちに早速じきすぐにすぐさま直接もう間もなく程なく追い追い追っ付けきた日ならずして上げずぼちぼち今にもそろそろ近近きんきん行く行く目前秒読みカウントダウン追っ掛け時間の問題ややあって今日明日すかさず間を置く時を移さずこの先日ならず/(2前に・ある時・いつぞや過去以前かつ在りし日往年往時往日旧時昔日せきじつ昔時せきじ昔年せきねん往昔おうせき往古古昔こせきいにしえ古くそのかみ当時前前かねてかねがね既往これまで従来従前し方先年当年一時一頃その節先に古来あらかじめ前以て年来旧来在来その昔太古千古大昔

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