余所・他所・外(読み)よそ

精選版 日本国語大辞典 「余所・他所・外」の意味・読み・例文・類語

よそ【余所・他所・外】

〘名〙 自分とは別の世界に属すると認識される物事や人。また、そういう対象に対して抱く心情やそれに対してとる態度などを表わす。
[一] 身近でない所。かけ離れた所。
① 離れた所。かけ離れていて、関係のない所。
万葉(8C後)一五・三六三一「いつしかも見むと思ひし粟島を与曾(ヨソ)にや恋ひむ行くよしをなみ」
※天草本伊曾保(1593)獅子王と、熊との事「キツネガ yosocara(ヨソカラ) コレヲ ミテ」
② ほかの場所。べつの所。
※万葉(8C後)四・七二六「外(よそ)にゐて恋ひつつあらずは君が家の池に住むとふ鴨にあらましを」
徒然草(1331頃)一七一「貝をおほふ人の、我まへなるをばおきて、よそを見わたして」
③ 外部。外がわの方。
※金刀比羅本保元(1220頃か)下「御涙に咽ばせ給ふと計こそ、御車のよそへは聞えけれ」
[二] 直接のつながりがないこと。疎遠な関係。
① 関係や関心がないこと。無縁な存在。ひとごと。
※万葉(8C後)三・四七四「昔こそ外(よそ)にも見しか吾妹子が奥つ城と思へば愛(は)しき佐保山」
※歌舞伎・小袖曾我薊色縫(十六夜清心)(1859)四立「申さばそちとは相弟子同前、夫故余所には思はねど」
② 間接的な関わり方。直接ではないさま。
※伊勢物語(10C前)七八「年ごろよそにはつかうまつれど、近くはいまだつかうまつらず」
[三] 親密でない人。また、うちとけない仲。
① 血縁関係がない間柄。また、男女関係や夫婦関係などがないこと。
落窪(10C後)四「よそにても心ざし侍りしを、今はましてなん」
② 世間一般の人。局外者。
源氏(1001‐14頃)椎本「よそのもどきを負はざらむなむよかるべき」
※評判記・難波物語(1655)「人めもはばからず、よそのおもはくをもかへりみず」
③ ほかの集団。他の家。他の流派
※申楽談儀(1430)よろづの物まねは心根「鬼の能、ことさら当流に変れり。拍子も、同じものを、よそにははらりと踏むを、ほろりと踏み、よそにはどうど踏むを、とうど踏む」
[補注]「万葉集」の「ヨソ」に「余所(処)」の表記が一例も見えないところから、「余所」は中世以降の当て字と思われる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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