作物所(読み)ツクモドコロ

デジタル大辞泉 「作物所」の意味・読み・例文・類語

つくも‐どころ【作物所】

平安時代宮中調度品などの調進をつかさどった所。作物司つくもづかさ

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精選版 日本国語大辞典 「作物所」の意味・読み・例文・類語

つくも‐どころ【作物所】

〘名〙 天皇家の家政機関の一つ内裏の南西隅、進物所の西にあって、工作場と事務所の二棟に分かれる。天皇家の私的な需要に応じて内匠寮の雑工が、調度類の製造彫刻鍛冶などに従った。蔵人の指揮下にあり、別当・預などの職員があり、別当は多く蔵人頭が兼ねる。承和七年(八四〇)初見。作物司(つくもづかさ)。つくもんどころ。
続日本後紀‐承和一五年(848)三月甲子「永安門西廊有火〈略〉作物所冶師、行火之所延也」
※栄花(1028‐92頃)月の宴「又つくもところにさるべき御調度共まで心ざしせさせ給ける事を」

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改訂新版 世界大百科事典 「作物所」の意味・わかりやすい解説

作物所 (つくもどころ)

平安京内裏内の進物所の西に置かれ,宮中の調度を作る内廷的な所。内匠寮(たくみりよう)の出先機関的な役割を果たしたものと思われ,蔵人所の配下に置かれた。《西宮記》にみえる840年(承和7)灌仏の際に蔵人の指示雑具を作ったという記事が初見史料で,その活動の一端を示せば,904年(延喜4)東宮のために御帳,台盤,銀器を,また大嘗会用に台盤,銀器を作ったことや,959年(天徳3)に卯杖(うづえ)を作製したこと,1015年(長和4)に神宝を作ったこと等々をあげることができる。所の職員としては別当,頭,預(あずかり)が置かれた。このほかに冶師がいたことも知られ,その他の工人たちもここに属していたものと思われる。別当には蔵人頭が任命される場合が多かった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「作物所」の意味・わかりやすい解説

作物所
つくもどころ

令外(りょうげ)の官司(かんし)の一つ。宮中の調度品をつくる所。進物所(しんもつじょ)の西にあった。平安時代には令制官司のほかに、内裏(だいり)に多くの「所」が置かれたが、この作物所もその一つ。国史上の初見は『続日本後紀(しょくにほんこうき)』の承和(じょうわ)15年(848)3月条であるが、『西宮記(さいぐうき)』によれば、その成立は840年(承和7)以前となる。職員には別当(べっとう)、預(あずかり)があり、その下に冶師(やし)などの技術工が所属する。別当は蔵人頭(くろうどのとう)が兼ねた場合もあるが、これは、作物所が蔵人所の被管として、蔵人の命令を受けて雑器具の工作、修理にあたるためであろう。この「所」で実際に作成、修理された器具類には、神宝(じんぽう)、御帳(みちょう)、台盤(だいばん)、銀壺、銀筥(ぎんのはこ)、卯杖(うづえ)や銭貨の文字彫りなどがある。

[渡辺直彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「作物所」の意味・わかりやすい解説

作物所
つくもどころ

平安時代,宮中や院で調度類の造進を司ったところ。令外官 (りょうげのかん) の一つ。職員には別当,預 (あずかり) ,内竪 (ないじゅ) ,冶師などがあり,蔵人頭を別当に補することが多かった。

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