(読み)れい

精選版 日本国語大辞典 「例」の意味・読み・例文・類語

れい【例】

[1] 〘名〙
① 慣習となっていることがら。しきたり。以前から広く世に行なわれていること。ならわし。
※伊勢物語(10C前)六三「世の中のれいとして、思ふをば思ひ、思はぬをば思はぬものを」 〔杜預‐春秋左氏伝序〕
② いつもの通りであること。通常であること。普通であること。ふだん。つね。
※大和(947‐957頃)一四〇「れいのおまし所にはあらで、廂におまし敷きて」
③ 世間によく知られていること。また、話し手と聞き手の間ですでに了解ずみのことやはっきり口に出せないことをさしていうことば。
※土左(935頃)承平五年二月五日「このすみよしの明神は、れいのかみぞかし」
④ 標準やよりどころとなる過去または現在の事柄。典例。先例
※宇津保(970‐999頃)国譲中「后・大殿・大臣・公卿たち心を一つにれいをひきてこれをと申さんには、何の疑ひかあらむ」 〔史記‐礼書〕
⑤ 同じような種類・内容の多くのものの中から、特にとりあげ提示して他を類推させるもの。いちれい。
※談義本・銭湯新話(1754)二「此方等(こちら)が様な素町人身の上に、古今公家武家の盛衰を、例(レイ)に引は勿体ない」
[2] 〘副〙 いつも。つねづね。不断に。
※宇津保(970‐999頃)嵯峨院「れいわずらひ侍る脚病のわづらひてなん、日頃暇文奉りて、参らず侍る」

れい‐・する【例】

〘他サ変〙 れい・す 〘他サ変〙 例を挙げる。例として示す。
※日蓮遺文‐佐渡御書(1272)「例せば日蓮が如し」

れい‐・す【例】

〘自サ変〙 ⇒れいする(例)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「例」の意味・読み・例文・類語

れい【例】

[名]
以前からのやり方。しきたり。ならわし。慣習。「長年のにならう」
過去または現在の事実で、典拠・標準とするに足る事柄。「古今にを見ない」
他を説明するために、同類の中から引いて示す事柄。「を挙げて説明する」「そのに漏れない」
いつものとおりであること。「によって話が大きい」
[副]いつも。つねづね。
「―ある所にはなくて」〈・二八〉
[類語](1習い習わし仕来しきた慣行慣例常例定例通例世の常世の習い例によって例のごとし如し/(2ためし先例前例先蹤せんしょう事例類例るい/(3実例一例・具体例・例証たとえ引き合いケース例外特例用例事例類例好例先例前例作例語例引例症例例示

れい【例】[漢字項目]

[音]レイ(漢) [訓]たとえる ためし
学習漢字]4年
同類の事柄。引き比べて参照すべき事柄。「例外事例前例典例判例範例類例
きまり。規定。「条例凡例はんれい法例
以前から行われている事柄。ならわし。いつもどおり。「例会例祭例年慣例吉例月例古例恒例通例定例不例
説明のため引き合いに出す事柄。「例示例証例題例文一例引例挙例実例適例文例
[名のり]ただ・つね・とも・みち

ためし【例/様】

前にすでにあったこと。先例。前例。「けんかで勝った―がない」
手本になるようなこと。模範。規範。
「かの御教へこそ、長き―にはありけれ」〈・梅枝〉
[類語]先例前例先蹤せんしょう事例類例るい

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「例」の意味・わかりやすい解説

例 (れい)

律令時代編纂された施行細則集。《弘仁式》に先立って編纂されたものとして〈八十一例〉〈式部省例〉〈治部省例〉〈民部省例〉〈刑部省例〉〈囚獄司例〉〈弾例〉などが逸文を残しており,ほかに〈六十一例〉の名も知られている。このうち〈八十一例〉は720年代の成立と推定され,律令や式と同様に〈凡〉字を冠した条文構成をとり,令文の不備を補い解釈を明確化しようとしたものであったらしい。〈式部省例〉以下の例はいわば諸司例とも総称すべきもので,その編纂の時期は各個に異なり,また同一の名称のものが2回以上にわたって編纂された可能性もあるが,おそらく720年代の後半にそれぞれ第1回の編纂が行われたと推定される。各官司ごとにその庶務執行に必要な細則を収録していて式と同一の性格を持つが,個々の条文は単行法として発令されたままの形態をのこしていて,むしろ格(きやく)に類した体裁となっている。ただし〈弾例〉は,弾正台(だんじようだい)の庶務執行に必要な細則をも含むが,大部分は行政監察や官人の非違の摘発のための基準を示したもので,勅によって下賜された。これには,旧弾例(成立年不詳,713年以後),延暦11年新弾例(792年施行),大同2年弾例(807年下賜)の3種あったことが知られる。

 以上の〈例〉の内容は,多く《弘仁式》の編纂にあたって条文として取り入れられ,《貞観式》《延喜式》へと引き継がれたためか,9世紀には〈例〉の編纂は行われた形跡がない。しかし10世紀以後には再び〈例〉が編纂されたらしく,〈延喜例〉〈御厨子所例〉〈進物所例〉〈雑例〉などの名が知られており,それぞれ若干の逸文を残している。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

山川 日本史小辞典 改訂新版 「例」の解説


れい

令文(りょうぶん)の不備を補ったり,令文の解釈を明確化するために出された施行細則,ないしそれらを集めた法典。式に類似する。大宝律令の施行にともない,令師(りょうのし)とよばれる明法家(みょうぼうか)の発した施行細則を整理した「八十一例」のほか,「六十一例」「弾例」「式部省例」「治部省例」「刑部省例」「囚獄司例」,和気清麻呂が撰したという「民部省例」などが知られる。体裁や内容はさまざまだが,令文と同様「凡(およそ)」の字を冠する完成形のものもある。多くは「弘仁式」にうけつがれた。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【則例】より

…中国,清代の基本行政法典である会典の運用上とくに生じた新例・疑義・補足などを各官庁ごとに編集して刊行した行政法典。中国には古来種々な法令があり,清代に及んで律・会典・例となった。…

【律令格式】より

…漢代の令は律の補足的な法規であったが,晋の泰始律令において,令は初めて律から独立し,行政法のごときものとなったといわれる。唐にいたって令は律よりも重要な根本法典となったが,ただその順序は慣例に従って律令と呼ばれた。唐初の政治には高邁な理想があり,耕す者には田ありの主義に従って均田法があり,国防には全国の壮丁が当たるという国民皆兵主義の府兵制があり,上古3代聖王の黄金時代の復活を志している。…

※「例」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

黄砂

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android