侮辱罪(読み)ブジョクザイ

デジタル大辞泉 「侮辱罪」の意味・読み・例文・類語

ぶじょく‐ざい【侮辱罪】

具体的なことがらを挙げずに、公然と人を侮辱する罪。刑法第231条が禁じ、拘留または科料に処せられる。親告罪一つ
[補説]具体的なことがらを挙げて、相手の社会的評価を下げる行為名誉毀損罪にあたる。

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精選版 日本国語大辞典 「侮辱罪」の意味・読み・例文・類語

ぶじょく‐ざい【侮辱罪】

〘名〙 事実を指摘しないで公然と他人を侮辱することによって成立する罪。親告罪の一つ。刑法二三一条に規定。「法廷侮辱罪」

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改訂新版 世界大百科事典 「侮辱罪」の意味・わかりやすい解説

侮辱罪 (ぶじょくざい)

公然と人を侮辱する罪で,拘留または科料に処せられる(刑法231条)。親告罪である(232条1項)。本罪の行為は,不特定または多数の人が認識しうる状態で,言語動作等によって,人に対する侮蔑の意を表示することである。名誉毀損罪と異なり,事実を摘示しない点に特徴がある。したがって,人の身体的欠陥を指摘する場合等も,それが単なる侮蔑の表示と認められれば侮辱罪となり,身体的欠陥をその人の人間的価値に関係させて事実として摘示していると認められる場合には名誉毀損罪となる。侮辱的言動であっても,通常の日常生活の範囲内のものであれば可罰的違法性を欠くことになる。なお,皇族に対する不敬罪や外国元首等に対する侮辱罪は1947年の改正で削除され,これらの行為も本条の適用を受けるようになった。ただし,告訴方式については特別の規定がある(232条2項)。
名誉毀損
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「侮辱罪」の意味・わかりやすい解説

侮辱罪
ぶじょくざい

事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留または科料に処せられる(刑法231条)。名誉に対する罪の一種。本罪は親告罪である(同法232条)。本罪と名誉毀損(きそん)罪(同法230条)との関係につき争いがある。通説判例は、両罪とも外部的名誉(社会的評価)を害する罪であると解し、両者を「事実の摘示」の有無によって区別するのに対して、名誉毀損罪は外部的名誉に対する罪であるが、本罪は名誉感情自尊心)を害する罪であるとする見解も有力に主張されている。

 この対立を反映して、前説によれば、本罪は事実を摘示することなく抽象的判断を公表すること(たとえば罵言(ばげん)、嘲笑(ちょうしょう)など)により成立することになるが、後説では、事実の摘示の有無を問わず、単に名誉感情を傷つけるにすぎない行為が本罪にあたりうるものと解されることになる。なお、後説では、小児などのように名誉感情を有しない者には本罪が成立する余地がないことになる。

[名和鐵郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「侮辱罪」の意味・わかりやすい解説

侮辱罪
ぶじょくざい

事実を摘示することなく,公然と他人を侮辱する罪 (刑法 231) 。人の人格的価値に対する個人的関心,つまり主観的な名誉感情を保護法益とするものである。侮辱行為とは,他人の人格的価値を否定する判断を表示して,その名誉感情を害するような一切の行為をいい,口頭によると文書によるとを問わない。名誉感情を有する一切の者 (法人を含む) について,この罪が成立するが,死者については成立しない。なお,事実を摘示して他人の名誉を害する場合は,名誉毀損罪 (230条) となる。いずれも親告罪

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百科事典マイペディア 「侮辱罪」の意味・わかりやすい解説

侮辱罪【ぶじょくざい】

具体的な事実を摘示しないで,公然,人を侮辱する罪(刑法231条)。親告罪。刑は拘留または科料。侮辱とは,人の名誉感情を害するに足りる事項の表示をいい,公然行われた場合にのみ本罪を構成。→名誉毀損(きそん)罪

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