俎上の魚(読み)そじょうのうお

精選版 日本国語大辞典 「俎上の魚」の意味・読み・例文・類語

そじょう【俎上】 の 魚(うお)

(まないたの上の魚、の意から) 相手のなすがままになるよりほかにない運命、死を待つよりほかに方法のないもの、運命の尽きたもののたとえ。まないたの鯉。
将門記(940頃か)「鷹の前の野原に遺り、俎上之魚の海浦に帰るが若し」

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デジタル大辞泉 「俎上の魚」の意味・読み・例文・類語

そじょう‐の‐うお〔ソジヤウ‐うを〕【×俎上の魚】

《料理されるためにまないたにのせられた魚の意から》相手のなすに任せるより方法のない運命のたとえ。まないたのこい
[類語]俎板まないたこい薬缶やかんでたたこのよう手も足も出ない

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故事成語を知る辞典 「俎上の魚」の解説

俎上の魚

運命を相手に握られている状態のたとえ。

[使用例] 私は俎上の魚となった以上あえて逃げかくれれはしない。内外の学者文士、評論家に由って私の人間味をたんなく縦横に評論して戴きたい坂口安吾*安吾人生案内|1951]

[由来] 「史記こう紀」に出て来る話から。紀元前二〇六年、しん王朝を滅ぼすために立ち上がった討伐軍の武将りゅうほうは、総大将の項羽の怒りを買ったため、こうもん(現在の西安市内)というところに陣を敷いていた項羽のもとへ、謝罪をしに訪れました。項羽は劉邦を許し、宴会を開いてもてなしますが、項羽の部下たちは、このチャンスに劉邦をなきものにしようと、隙をうかがっています。危険を察した劉邦の部下たちは、劉邦がトイレにたった際に、そのままこっそり逃げ出すように進言しますが、劉邦は、項羽に帰り際のあいさつをしていないことを気にして、なかなか動こうとしません。すると、部下の一人、はんかいが、「この瞬間、『人はまさとうたり、我は魚肉たり(相手はほうちょうまな板で、我々は魚や肉なのです)』。いとまごいなどしていられません」と説得したので、劉邦も納得してようやく立ち去ったのでした。この危機を生き延びた劉邦は、後に項羽を打ち破り、前漢王朝を樹立することになります。

[解説] このときの樊噲セリフからは、「大行は細謹を顧みずという故事成語も生まれています。

〔異形〕俎上の肉/まないたの鯉。

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