保全執行(読み)ほぜんしっこう

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「保全執行」の意味・わかりやすい解説

保全執行
ほぜんしっこう

保全命令,すなわち仮差押命令仮処分命令に基づく執行民事保全法43~57)。保全執行は,保全命令の正本に基づいて,裁判所または執行官が行なう(43条,2条2項)。これは将来強制執行による権利実現を確保するために予防的・暫定的に行なわれるものであるため,本来の強制執行におけるように権利者の満足を得させる段階にいたらない。ただし,仮処分のうち,いわゆる仮の地位を定める仮処分(23条2項)は将来の執行保全を目的とするものではなく,現在の危険を防止するため必要があるときは満足の段階まで進むことがある点で,そのほかの保全執行である仮差押えおよび係争物に関する仮処分と著しくその性格を異にしている。そのため,仮の地位を定める仮処分は,満足的仮処分と呼ばれる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の保全執行の言及

【強制執行】より

…執行官は,動産執行や引渡執行のような,事実的行為を要する執行の実施にあたり,他方,執行裁判所は,不動産執行,債権執行,あるいは間接強制のような,観念的処分が中心となる執行を分担する。そのほか,強制執行の一種として,保全執行があげられることがある。すなわち,以上に述べた強制執行が,請求権の満足を図るという意味で,本執行と呼ばれるのに対して,民事保全法にもとづく仮差押え仮処分は,将来の本執行にそなえて,債務者の財産の現状を保全するという意味で,保全執行と呼ばれる。…

【保全訴訟】より

…このような仮差押え,仮処分の手続は,仮差押命令,仮処分命令を得る段階と,その命令を現実に執行する段階とに分かれる点で,民事訴訟と強制執行の関係と同じである。前の段階は狭義で保全訴訟といい,民事保全法(2条1項,9~25条)に規定され,後の段階は保全執行と呼ばれ,同じく民事保全法(2条2項・3項,43~57条)に規定されている。以下,狭義の保全訴訟について述べる。…

【民事保全法】より

…ふつうに民事保全というときは,この民事保全上の仮差押えと係争物に関する仮処分と仮の地位を定める仮処分を指し,これを狭義の民事保全とよぶ。民事保全の手続は,保全命令に関する手続と保全執行に関する手続の2段階に分かれ,前者は保全命令の申立ての当否を審理して保全命令を発するべきかどうかを判断する裁判手続であり,後者は発せられた保全命令に基づいてその内容を実現する執行手続である。 保全命令(仮差押命令および仮処分命令)は債権者の申立てにより裁判所が発する(民事保全法2条1項)。…

※「保全執行」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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