修二会(読み)シュニエ

デジタル大辞泉 「修二会」の意味・読み・例文・類語

しゅに‐え〔‐ヱ〕【修二会】

修二月会しゅにがつえ」の略。 春》

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精選版 日本国語大辞典 「修二会」の意味・読み・例文・類語

しゅに‐え ‥ヱ【修二会】

〘名〙 「しゅにがつえ(修二月会)」の略。《季・春》 〔諸国風俗問状(1813)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「修二会」の意味・わかりやすい解説

修二会 (しゅにえ)

修二月会あるいは単に修二月ともいう。毎年2月の初めに国家の安泰,有縁の人々の幸福を祈願する法会。インドでは建卯すなわち2月を歳首とすることが《宿曜経》にみえ,日本では年頭の法会を修正会,2月に祈修する法会を修二会と称した。《三宝絵詞》に〈此月の一日よりもしくは三夜・五夜・七夜,山里の寺々の大なる行也。つくり花をいそぎ,名香をたき,仏の御前をかざり〉とみえるように,寺々で盛んに行われた。《師光年中行事》や《年中行事抄》によると,12世紀初頭ころには,2月2日の蓮華蔵院の修二会をはじめ,5日の宝荘厳院,8日の法勝寺常行堂などで行われている。しかし寺々により法会の内容は異なっていたようで,有名な東大寺二月堂伊勢近長谷寺のそれは十一面悔過(けか)会,《延喜式》主税式にみえる新薬師寺薬師寺の修二会は薬師悔過会であり,法勝寺常行堂のはおそらく阿弥陀悔過会であったと推測される。そのほか東寺,延暦寺根本中堂,興福寺秋篠寺などでも行われていたが,そのほとんどは中世あるいは明治の廃仏毀釈で断絶し,現在も行われているのは東大寺二月堂,薬師寺,新薬師寺などである。期日も明治の太陽暦の採用により,1ヵ月遅らせている。

 興福寺の修二会は,修円の弟子寿広により870年(貞観12)に西金堂で始行せられ,1027年(万寿4)には東金堂でも行われた。西金堂修二会には大和猿楽四座による薪(たきぎ)能が奉納され,能楽史上における意義は大きい。なお現在では薪能は修二会とはベつに,5月に催される。

 薬師寺の修二会は花会式(はなえしき)として知られるとおり,10種12瓶の美麗造花をもって薬師如来仏前を荘厳し,7日間にわたって行う悔過法要で,その創始は1107年(嘉承2)と伝える。現在は3月30日から7日間で,結願の4月5日には鬼追いの儀式がある。

 東大寺二月堂の修二会は,752年(天平勝宝4)ころに創始された光明皇太后の紫微中台の十一面悔過会の伝統を継ぐもので,現在は3月1日より二七日(14日間)にわたり,連日十一面観世音を本尊として1日に六時(日中,日没にちもつ),初夜,半夜,後夜,晨朝(じんぢよう))の行法を行う。鎌倉時代には不退行法として伝承され,多くの年中行事が退転廃絶したなかで今日に伝えられてきた。参籠する僧は練行衆(れんぎようしゆ)と称し,2月20日より末日まで前行として別火精進と本行への準備を行い,本行はかつては前半の7日間(上七日)と後半の7日間(下七日)とで交替した。本行は開白(かいはく)作法に始まり,3月5日には実忠忌,5,6,7,12,13,14日には走(はしり)行法,7日には小観音,12日には〈御水取〉が行われ,実忠忌と〈御水取〉の日には過去帳が読誦される。12,13,14日の深夜には噠陀(だつたん)行法が行われ,15日の結願作法で本行は終わり,ついで後行の涅槃講が修せられる。修二会の代名詞のようになっている〈御水取〉は,12日の深夜に閼伽井(あかい)(若狭井)より閼伽水を汲む儀式で,春を迎えるにあたり,若水を汲んで邪気をはらう習俗とかかわる。また毎夜練行衆の宿坊から二月堂への上堂に当たり,松明を燃やすところから,巷間〈御松明(おたいまつ)〉と称せられている。奈良時代より伝承されてきたこの行法は,種々の信仰と結びつき,日本の宗教行事のなかでも最も著名なものの一つといってよく,東大寺図書館には,鎌倉時代からの《二月堂修中練行衆日記》が伝えられている。
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知恵蔵 「修二会」の解説

修二会

お水取り(東大寺)」のページをご覧ください。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「修二会」の意味・わかりやすい解説

修二会
しゅにえ

毎年2月の初めに国家の平安、有縁(うえん)の人々の幸福などを祈願する仏会(ぶつえ)。修二月会、修二月とも称した。インドでは建卯(けんぼう)すなわち2月を歳(とし)の首(はじめ)とすることが『宿曜経(すくようきょう)』にみえ、わが国では年頭の仏会を修正会(しゅしょうえ)、2月に行う法会(ほうえ)を平安時代には修二会と称した。東大寺二月堂の修二会(御水取(おみずとり))は十一面観音菩薩(かんのんぼさつ)を本尊とする十一面悔過(けか)として有名であるが、984年(永観2)の『三宝絵詞(さんぼうえことば)』の修二月にみられるように、2月1日ころより、三夜、五夜、七夜にわたって、京都の山寺でも盛んに行われており、寺々により修二会の内容は異なっていた。『延喜主税式(えんぎしゅぜいしき)』にみえる奈良新薬師寺のそれは薬師悔過会で、伊勢(いせ)国(三重県)近長谷寺(きんちょうこくじ)(光明寺)の修二会は十一面悔過会であった。平安中期以降には、蓮華蔵院(れんげぞういん)、延暦寺(えんりゃくじ)、宝荘厳院(ほうしょうごんいん)、法勝寺(ほっしょうじ)、興福寺、秋篠寺(あきしのでら)などでも行われていたが、中世に至って廃絶し、今日わずかに、東大寺二月堂、薬師寺、新薬師寺などで行われているにすぎない。

[堀池春峰]

『堀池春峰著「二月堂修二会と観音信仰」(『南都仏教史の研究 上』所収・1980・法蔵館)』『堀池春峰他著『お水取り』(1985・小学館)』

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百科事典マイペディア 「修二会」の意味・わかりやすい解説

修二会【しゅにえ】

修二月会の略(旧2月に行われたのでこの名がある)。現在では3月1日から15日まで,奈良東大寺二月堂で行われるのが名高い。二月堂の開祖実忠和尚によって752年に始められたという。期間中僧侶たちはきびしい戒律を守って,連夜種々の行法を行う。特に12日の御水取が知られ,いつかこれが修二会全体の呼称のようにさえなっている。
→関連項目大和猿楽

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「修二会」の意味・わかりやすい解説

修二会
しゅにえ

仏教儀式名。2月 (新暦あるいは旧暦) に執行される悔過 (けか) の行事。2月は正月に準じ,修正会 (しゅしょうえ) と同様,旧年の穢れを祓う懺悔 (さんげ) の行と新年の平安・豊穣祈念を行う。中国の儀式を起源とし,日本でも奈良時代には南都七大寺で盛んに行われるようになった。最も大規模なものは東大寺二月堂の修二会十一面観音悔過で,「お水取り」の名称で広く親しまれている。

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世界大百科事典(旧版)内の修二会の言及

【悔過作法】より

…主尊の違いによって,薬師悔過,阿弥陀悔過,十一面(観音)悔過,如意輪(観音)悔過,吉祥悔過,舎利悔過などの種類があるが,その法要の構成には共通する部分が多い。旧正月,旧2月に当たる時期に春迎えの仏事として行われ,修正会(しゆしようえ)・修二会(しゆにえ)の法要としてつとめるのが普通で,数日にわたり,また1日数回にわたる例が多い。もっとも大規模なのは東大寺の修二会で,上七日(じようしちにち)・下七日(げしちにち)の14日間にわたり,毎日6回,日中・日没(にちもつ)・初夜・半夜・後夜・晨朝(じんぢよう)の六時に相当する悔過作法が行われる。…

【宗教音楽】より

…例えばフランスのテゼーの〈兄弟団〉をめぐるエキュメニカル(教会合同)な典礼と聖歌の運動は,日本にも影響を及ぼしている。
[仏教音楽]
 たとえば東大寺の〈修二会〉に際して歌われる声明やホラガイなどの吹奏は,最も古い仏教音楽を伝えているものと考えられている。天台,真言の両声明の伝統は平安時代以来,現在までの日本声明の根幹をなしてきたばかりでなく,日本のさまざまな伝統音楽の起源ともなっている。…

【呪師】より

…すなわち,法会の場への魔障の侵入を防ぎ,護法善神を勧請(かんじよう)して,法会の円満成就のための修法を行う。たとえば,悔過会の代表例にあたる東大寺修二会(しゆにえ)(通称,御水取)では,4種の重要な役割が設けられており,通常,上席から和上(わじよう),大導師(だいどうし),呪師,堂司(どうつかさ)と称する。和上は戒律を専門とし,大導師は法要全体を統括し,堂司は庶務や対外折衝にあたる。…

【呪師猿楽】より

…平安時代,寺院に属し,法会の際に呪師の役を代行した猿楽。東大寺,興福寺等の大寺では,春を迎え,新しい年の太平を祈る修正会(しゆしようえ),修二会(しゆにえ)の勤行の際,法呪師(呪師)と呼ぶ役僧が,仏法守護の神々を勧請して,結界,鎮壇,鎮魔,除魔等の密教的な行法を受け持った。行法の動作は激しく,鈴を鳴らし,太刀を振り,足早に小刻みに走り回った(走り)らしい。…

【薪能】より

…奈良興福寺の修二会(しゆにえ)に付した神事猿楽で,薪猿楽,薪の神事とも称され,東・西両金堂,南大門で数日間にわたって行われた。《尋尊御記》には〈興福寺並びに春日社法会神事〉,《円満井(えんまい)座壁書》には〈御神事法会〉,世阿弥の《金島書(きんとうしよ)》には〈薪の神事〉などと記されている。…

※「修二会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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