(読み)フ

デジタル大辞泉 「俯」の意味・読み・例文・類語

ふ【俯】[漢字項目]

[音]フ(呉)(漢) [訓]うつむく
うつむく。身をかがめて下を向く。「俯角俯瞰ふかん俯仰俯伏

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「俯」の意味・読み・例文・類語

うつ‐む・ける【俯】

〘他カ下一〙 うつむ・く 〘他カ下二〙 ⇔あおむける
① 顔を下へ向ける。伏せる。うつぶける。
※玄武朱雀(1898)〈泉鏡花〉四「口あてもしっかりした、目ばかりの其顔を、両個(ふたり)ともうつむけて」
器物の口などを下の方へ向ける。うつぶける。
上杉家文書‐永祿二年(1559)六月二九日・鉄放薬方並調合次第「左様に煙あがり候はすは、桶をうつむけてふたにし候て、むしけしにし候也」
③ ばかにする。転じて、他人作品を改作する。うつむけにする。うつぶける。
浄瑠璃・蛭小島武勇問答(1758)二「挑燈屋をうつむけにするのか、うつむければ珍重なれども」

うつ‐ぶ・す【俯】

[1] 〘自サ五(四)〙
① 顔を下に向けて伏す。腹ばいになる。うっぷす。⇔仰向く
源氏(1001‐14頃)手習「衣(きぬ)を引きぬがせむとすれば、うつぶして声立つばかり泣く」
② 頭をたれる。下を向く。うつむく。⇔仰向く
※宇津保(970‐999頃)楼上下「御ぐし白からず、御腰すこしうつぶし給へり」
[2] 〘他サ下二〙 ⇒うつぶせる(俯)

うつ‐む・く【俯】

[1] 〘自カ五(四)〙
① 頭を前へ垂れる。顔を伏せる。また(比喩的に)物が傾く。うつぶす。うつぶく。⇔あおむく
※玉塵抄(1563)九「かををもえあげずうつむいて」
大つごもり(1894)〈樋口一葉〉上「ほろりほろりと涙のこぼれるを、見せじとうつ向きたる肩のあたり」
容器などの口が逆になる。
[2] 〘他カ下二〙 ⇒うつむける(俯)

うつ‐ぶ・ける【俯】

〘他カ下一〙 うつぶ・く 〘他カ下二〙
※春のみやまぢ(1280)正月二四日「すずりのふたはうつぶけてをくよしききをきて侍に」
※あほうとかしこの番附(1818‐30頃か)かしこの方「人のしだしうつぶけるもの」

うつ‐ぶ・く【俯】

[1] 〘自カ四〙
① =うつむく(俯)(一)①
※宇治拾遺(1221頃)一一「ものの来ければうつぶきて見るに、弓のかげは見えず」
② =うつむく(俯)(一)②〔日葡辞書(1603‐04)〕
[2] 〘他カ下二〙 ⇒うつぶける(俯)

うつ‐むき【俯】

〘名〙 (動詞「うつむく(俯)」の連用形名詞化)
① 顔を伏せること。また、そのさま。うつぶき。うつぶし。うつむ。⇔あおむき
※玉塵抄(1563)五三まな板の上にうつむきにねさせて」
② 容器などの口を下にすること。また、そのさま。
物理学感覚(1917)〈寺田寅彦〉「仰向きの茶碗と俯向きの茶碗」

うつ‐ぶき【俯】

〘名〙 (動詞「うつぶく(俯)」の連用形の名詞化) =うつむき(俯)
※応永本論語抄(1420)里仁「顛はあをのきにたをるるを云、沛はうつふきにたをるるを云」
※重右衛門の最後(1902)〈田山花袋〉七「低頭(ウツブキ)になって頻りに何か為て居るではないか」

うつ‐ぶせ【俯】

〘名〙 (動詞「うつぶせる(俯)」の連用形の名詞化) うつぶせること。また、その状態。うつむけ。うっぷせ。⇔仰向き
※古事談(1212‐15頃)一「餠入たる折樻を、乍餠をば之。うつぶせに置きたりければ」

うつ‐ぶし【俯】

〘名〙 (動詞「うつぶす(俯)」の連用形の名詞化) 顔を下に向けて伏せるさま。腹ばいになるさま。うつぶせ。うつぶき。
※竹取(9C末‐10C初)「猛(たけ)く思ひつる宮つこまろも、物に酔(ゑ)ひたる心地して、うつふしに伏せり」

うつ‐むけ【俯】

〘名〙 (動詞「うつむける(俯)」の連用形の名詞化) 顔を下に向けること。また、器物などの口を下に向けること。うつぶけ。うつぶせ。⇔あおむけ
※雑俳・柳多留‐一四(1779)「うつむけに寝た傾城は手におへず」

ふ‐・す【俯】

〘自サ変〙 下を向く。うつむく。かがむ。
※運命(1919)〈幸田露伴〉「測り難きの数を畏れて、巫覡卜相(ふげきぼくさう)の徒の前に首(かうべ)を俯(フ)せんよりは」

うつ‐ぶけ【俯】

〘名〙 (動詞「うつぶける(俯)」の連用形の名詞化) =うつむけ(俯)
※俳諧・俳諧勧進牒(1691)下「やや寒み大肌ぬぎてけはう也〈曲水〉 居風呂桶はうつぶけに干す〈芹花〉」

うつ‐ぶ・せる【俯】

〘他サ下一〙 うつぶ・す 〘他サ下二〙 物を下向きに置く。顔を下に向けて横たわる。
※法華義疏長保四年点(1002)一「阿難仏の所説を聴きて散乱の心无きこと、覆(ウツフセ)ぬ器の如し」

うっ‐ぷ・す【俯】

〘自サ五(四)〙 =うつぶす(俯)
※善心悪心(1916)〈里見弴〉「切腹した人のやうにうっぷしてゐる佐々を」

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