倉役(読み)くらやく

精選版 日本国語大辞典 「倉役」の意味・読み・例文・類語

くら‐やく【倉役】

〘名〙 室町時代幕府または戦国大名が京都市中または領内土倉質屋に課した税。土倉役
塵芥集(1536)四三条「くらやくをせすして、ぬすみものしちにとるともから、ぬす人とうるいの由」

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デジタル大辞泉 「倉役」の意味・読み・例文・類語

くら‐やく【倉役】

室町時代、幕府・諸大名土倉どそう・質屋に課した税。土倉役。

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改訂新版 世界大百科事典 「倉役」の意味・わかりやすい解説

倉役 (くらやく)

〈蔵役〉〈土倉役〉〈土倉懸銭〉などともいう。中世朝廷,幕府,寺社大名,自治都市などが,金融業者である土倉(どそう)に課した税。酒屋役と併せ徴された場合が多く,臨時課税と恒常的な営業税とがある。臨時課税の土倉役として明らかであるのは,1315年(正和4)ころ,日吉(ひえ)社神輿造替の費用として京都の土倉に賦課したもので,山門支配下の土倉280軒に1宇別750疋,それ以外の55軒に1宇別1000疋を課している。それ以後,南北朝期には,朝廷も幕府も,〈土倉天役〉を課しており,祇園社が社領内11ヵ所の土倉に節料を課していたように,寺社も支配下の土倉に課税していた。これら諸権力の課税権をたちきり,室町幕府のもとに土倉に対する支配を集中し,営業税を課税したのが,1393年(明徳4)の酒屋土倉役の課税である。これは月ごとに質物員数によって課税するものであった。したがって,徳政令などで土倉営業が立ちゆかない場合には,その徴収は不可能になったし,類火にあった土倉は6ヵ月間の納銭は免除された。幕府収納土倉役は毎月200貫ぐらいでなかったかといわれている。明徳の法では臨時課税の免除がうたわれているが,幕府財政の逼迫の結果,〈臨時ノ倉役トシテ大嘗会ノ有リシ十一月ハ九ケ度,十二月八ケ度也〉という《応仁記》の記述のように,土倉役に依存せざるをえなかったのである。

 諸国大名も土倉役を領内の土倉に賦課した。今川氏は,1561年(永禄4)御用商人の松木氏に倉役・酒役などを免除していることによって,倉役徴収を知ることができる。さらに注目すべきは,自治都市である大山崎では市政機関である惣中が,土倉役を賦課している事実である。惣中の覚書である〈万記録〉には,1523年(大永3)の算用として田中というものから借りた20貫のうち10貫500文を〈土蔵役〉に用立てている。他の自治都市においても同様の賦課があった可能性が強い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「倉役」の意味・わかりやすい解説

倉役
くらやく

中世、高利貸金融業者である土倉(どそう)に賦課された課役。土倉役とも。鎌倉後期、近江(おうみ)(現、滋賀県)日吉社神輿造替(ひえしゃみこしぞうたい)の費用として「土倉課役(かやく)」が課されたのが早い例で、最も有名で恒常的なものとして知られるのが、室町幕府によって1393年(明徳4)に設定された「洛中辺土散在土倉并酒屋役(らくちゅうへんどさんざいどそうならびにさかややく)」である。その徴収には、公方御倉(くぼうおくら)で構成される納銭方(のうせんかた)が質物の員数に応じてあたった。その他、公家(くげ)領や戦国大名領、さらに寺社境内においても同様の役の存在が知られる。

[河内将芳]

『下坂守著『中世寺院社会の研究』(2001・思文閣出版)』

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百科事典マイペディア 「倉役」の意味・わかりやすい解説

倉役【くらやく】

室町時代,土倉(どそう)に賦課された課税。土倉役・土倉懸銭(かけせん)とも。1393年以来制度化された。同時に制度化された酒屋役とともに室町幕府の重要な財源。徳政一揆(いっき)の頻発(ひんぱつ)や徳政令の発布で徴収は不安定なものとなった。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「倉役」の意味・わかりやすい解説

倉役
くらやく

質屋の課税。室町時代,土倉役,土倉懸銭ともいわれ,質物の員数により土倉に課された公事 (くじ) で,酒屋役と並んで,室町幕府の重要な財源となった。江戸時代の倉役は,質屋冥加といわれた。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「倉役」の解説

倉役
くらやく

土倉役(どそうやく)

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旺文社日本史事典 三訂版 「倉役」の解説

倉役
くらやく

土倉役

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