デジタル大辞泉
「借」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
か・る【借】
〘他ラ五(四)〙
※
万葉(8C後)一四・三四七二「人妻と何
(あぜ)か其を言は
むしからばか隣の衣を可里
(カリ)て着なはも」
※
平家(13C前)三「人に車かて西八条へ出られたり」
※
書紀(720)神武即位前戊午年九月(北野本訓)「吾必ず鋒刀
(つはもの)の威
(いきほひ)を仮
(カラ)ずして、坐ながらに天の下を平
(む)けてむとのたまふ」
※
浄瑠璃・袂の白しぼり(1710頃)中「外より云うて済まうならお前の
智恵を借らねども」
③ 一時のまにあわせとして使う。また、
自動詞のように用いて、永久でない。かりものである。
※万葉(8C後)二〇・四四七〇「
泡沫(みつぼ)なす可礼
(カレ)る身そとは知れれどもなほし願ひつ千歳の命を」
※風姿花伝(1400‐02頃)序「
代々の人、
風月の景を仮
(カッ)て、此遊びの中だちとせり」
④ 他の客に揚げられている
遊女を別の座敷から呼ぶ。
※
浮世草子・好色二代男(1684)七「爰の四天王、市橋小沢が胸の疵も、しほらしく残らずかりて、菟角は夜ともに呑あかして」
⑤ 遊女を見立てるために呼びよせる。
※浮世草子・
好色一代男(1682)二「七左衛門といふ揚屋に入て借
(カ)るもこころやすく」
※歌舞伎・名歌徳三舛玉垣(1801)五立「大小入り三味線の鳴物をかり、花々敷(はなばなしき)立宜しく」
か・りる【借】
〘他ラ上一〙 (四段活用動詞「かる(借)」から転じて、近世中期以後、
江戸で盛んに使われるようになり、現在の共通語となった)
① 後で返す約束で、ある期間、他人の物を、自分で使うために自分の手もとに移す。また、そのように土地、建物、部屋などを使う。
(イ)
金銭、
品物などの場合。〔運歩色葉(1548)〕
(ロ) 土地、家、部屋などの場合。
※天正本狂言・地蔵坊(室町末‐近世初)「これはしゅ国一見の地ざう房と名のって、宿かりる」
※内地雑居未来之夢(1886)〈
坪内逍遙〉一二「女子の口を藉
(カリ)るを良とす」
③ (比喩的に) あるものを仮に自分の目的のために使う。
※芥川文学の魅力(1954‐55)〈
中村真一郎〉二「彼の言葉を藉
(カ)りれば」
かり【借】
〘名〙 (動詞「かる(借)」「かりる(借)」の連用形の名詞化)
① 金品などを、ひとに借りること。また、その借りた金品。借金。負債。⇔
貸し。
※古今著聞集(1254)五「草を売りて来たりけるを『只今かはりなかりければ、其の草かしおけ、かはりは後にとれ』といひけるを、草売りうち聞きて、あさましやかりとはいかに朝ごとに草にかけたる露の命を」
※人情本・春色恵の花(1836)初「他の宿へゆくにはここの借財(カリ)を払はねへけりゃアならず」
② ひとから金品を借りたり、恩を受けたりなどしたために感じる、心のおいめ。精神的な負担。「かりがある」「かりができる」
③ 江戸時代、上方の遊里で遊女をえらぶために、置き屋から揚げ屋に呼びよせる制度。揚げ屋からの称で、置き屋からは「貸し」という。
いら・う いらふ【借】
※書紀(720)朱鳥元年七月(北野本訓)「天下の百姓の貧乏しきに由りて、稲と資財とを貸(いらへ)よ」
しゃく【借】
〘名〙 借りること。金を借りること。
※狂歌・徳和歌後万載集(1785)一一「思ひきやわがしゃくせんのしゃくならでわきしゃうもんにこはるべしとは」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報