倭姫命(読み)やまとひめのみこと

精選版 日本国語大辞典 「倭姫命」の意味・読み・例文・類語

やまとひめ‐の‐みこと【倭姫命】

記紀所伝で、垂仁天皇の娘。伊勢斎宮日本武尊東征の時、草薙剣などを授けた。

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デジタル大辞泉 「倭姫命」の意味・読み・例文・類語

やまとひめ‐の‐みこと【倭姫命】

垂仁天皇皇女天照大神あまてらすおおみかみの社を、伊勢五十鈴川いすずがわのほとりに建てたと伝えられる。また、日本武尊やまとたけるのみことの東征の際、草薙剣くさなぎのつるぎを授けて難を救ったという。

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改訂新版 世界大百科事典 「倭姫命」の意味・わかりやすい解説

倭姫命 (やまとひめのみこと)

《日本書紀》垂仁朝に語られる伊勢神宮起源譚の主人公。垂仁天皇の娘,日本武(やまとたける)尊のオバにあたる。崇神朝に宮廷内からいったん倭の笠縫邑(かさぬいのむら)に遷されていた天照大神(あまてらすおおかみ)は,垂仁朝によりよき宮処を求めて東国諸国を遍歴した末,大和の東方伊勢度会(わたらい)の地に鎮座することになった。このとき大神の御杖代(みつえしろ)となったのがヤマトヒメであった。ヒメは景行朝まで伊勢神宮にあり,ヤマトタケルの西征東征にあたり,あれこれと助力する。

 上述の神宮起源の話は斎宮の起源譚でもある。神宮成立とともに天皇家の祖神アマテラスに仕えるために選ばれた未婚の皇女ヤマトヒメは,神話的な初代斎宮にほかならない。斎宮は,名目的には国家的最高巫女であったが,実質は国家成立以前に兄弟のかたわらで呪的霊能をもって一族を宗教的に支配していた姉妹を遠ざけ,男首長が支配権を一元化する方策の,天皇家における具体化が斎宮制であったといえよう。斎宮は天皇の姉妹ではなく娘だが,これは系譜関係が横から縦へおきかえられたものである。古代に霊的に結ばれていた兄弟姉妹の関係に代わりうるのは父方オバとオイであった。ヤマトヒメがヤマトタケルをいったんは救いえたのは,斎宮ヤマトヒメを通じて発揮されるアマテラスの神威と,オイを守護しうるオバの霊能とが重なっていたのだとも考えられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「倭姫命」の意味・わかりやすい解説

倭姫命
やまとひめのみこと

垂仁(すいにん)天皇の皇女。母は皇后日葉酢媛命(ひばすひめのみこと)。垂仁天皇25年、それまで倭(やまと)の笠縫邑(かさぬいのむら)で天照大神(あまてらすおおみかみ)を奉斎していた崇神(すじん)天皇の皇女豊鍬入姫命(とよすきいりひめのみこと)にかわって奉仕、さらによい鎮座地を求めて伊賀近江(おうみ)、美濃(みの)、尾張(おわり)を経て伊勢(いせ)国五十鈴(いすず)川上に遷座したと伝承される。また、景行(けいこう)天皇の時代に日本武尊(やまとたけるのみこと)が東征の途中伊勢に寄ったとき、神意を受け草薙剣(くさなぎのつるぎ)を授け、「慎みて怠ることなかれ」と戒めて尊の危急を救ったと伝承される。現在三重県伊勢市倭町にその御陵伝承地があり、皇大神宮別宮の一として倭姫宮が1923年(大正12)創建された。

[鎌田純一]

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朝日日本歴史人物事典 「倭姫命」の解説

倭姫命

『古事記』『日本書紀』にみえる人物。日葉酢媛が生んだ,垂仁天皇の皇女。甥の日本武尊(ヤマトタケルノミコト)が西征に出立する際に,伊勢神宮にいる彼女が自分の衣装をこれに与えたので,ヤマトタケルはそれで女装して敵を殺害することができ,また東征の際にも彼女が草薙剣と火打ち石の入った袋とを与えたので,ヤマトタケルはそれを用いて難を切り抜けることができたと『古事記』は伝える。この倭姫の名とヤマトタケルの名とがペアになっていることから,以上の話は,神の力を背景に勇者が国を平定したことを語るものだと考えられる。なお『日本書紀』には,倭姫は天照大神の託宣のとおり伊勢に祠と斎宮を建てたという,伊勢神宮の起源を語る伝承がみえ,倭姫と同神宮との間に密接な関係があることを示している。<参考文献>肥後和男『日本神話研究』,吉井巌『ヤマトタケル』

(佐佐木隆)

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「倭姫命」の解説

倭姫命 やまとひめのみこと

記・紀にみえる垂仁(すいにん)天皇の皇女。
母は日葉酢媛(ひばすひめの)命。「日本書紀」によれば,天照大神(あまてらすおおみかみ)を伊勢(いせ)(三重県)にまつり,伊勢神宮の初代斎宮(さいぐう)となる。東征にむかう甥(おい)の日本武尊(やまとたけるのみこと)に草薙剣(くさなぎのつるぎ)をあたえたという。「古事記」には倭比売命とあり,2代斎宮。倭建命(日本武尊)の東征にあたり,火打ち石のはいった袋もあたえたという。

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