偽膜(読み)ギマク

デジタル大辞泉 「偽膜」の意味・読み・例文・類語

ぎ‐まく【偽膜/義膜】

組織としての構造をもたず、繊維組織にうみなどが加わってできた膜様のもの。ジフテリアなどの際にみられる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「偽膜」の意味・わかりやすい解説

偽膜
ぎまく

生体組織の炎症は滲出(しんしゅつ)物の性状や種類によって分類されるが、滲出物の中に多量の線維素血液凝固の際に生ずる不溶性のタンパク質)を含んでいる場合を線維素性炎とよぶ。滲出した線維素は粘膜表面で上皮細胞と絡み合って膜様物を形成するのが常であり、これを偽膜という。したがって線維素性炎は偽膜性炎ともよばれる。気管支の粘膜表面が黄色の厚い偽膜で覆われた場合を偽膜性気管支炎とよび、ジフテリアに特有な病変である。また赤痢菌の感染によっておこる細菌性赤痢では、結腸粘膜に浮腫(ふしゅ)、充血に次いで偽膜が形成されることが特徴で、周囲組織とともに壊死(えし)に陥り、これが剥離(はくり)して、不規則な地図状の潰瘍(かいよう)を形成する。また最近では、原因不明ではあるが、感染症の抗生物質による治療中、手術後、腎(じん)不全などの場合に偽膜性腸炎というのがおこり、臨床的に注目されている。なお、偽膜に壊死を伴ったものを一般に痂皮(かひ)とよんでいる。

渡辺 裕]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「偽膜」の意味・わかりやすい解説

偽膜
ぎまく
pseudomembrane

たとえば,ジフテリアの場合の気管や咽頭部,あるいは細菌性赤痢の場合の大腸にみられるように,線維素の一部滲出液と混ってできる,外見上は膜のような生成物をいう。また,胃腸真菌感染症の場合も,組織の壊死片と真菌集落が膜のようにみえる。

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世界大百科事典(旧版)内の偽膜の言及

【ジフテリア】より

法定伝染病の一つ。ジフテリア菌Corynebacterium diphtheriaeは1883年ドイツのクレプスEdwin Klebs(1834‐1913)により患者の偽膜から発見されたグラム陽性の杆菌で,大きさ2~5μm×0.5~1.0μm,菌体内に異染小体とよばれる顆粒をもつ。ジフテリアは患者や保菌者からの飛沫感染によっておもに冬季に発病する。…

※「偽膜」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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