備中紙(読み)びっちゅうがみ

精選版 日本国語大辞典 「備中紙」の意味・読み・例文・類語

びっちゅう‐がみ【備中紙】

〘名〙 備中国で産出する紙。備中
※宗五大草紙(1528)折紙調候様の事「公方様へは常々公家門跡、大名衆は備中紙小高檀紙を一重二に折て御用候」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「備中紙」の意味・わかりやすい解説

備中紙
びっちゅうがみ

備中国(岡山県)で漉(す)かれた和紙。備中と略すこともある。備中国が古くから和紙の名産地であったことは、京都の相国寺(しょうこくじ)に伝わる日記『鹿苑日録(ろくおんにちろく)』の永禄(えいろく)9年(1566)5月7日の条に、「備中は紙の名所なり」とあることでもわかる。室町時代後期に、上房(じょうぼう)郡広瀬(高梁(たかはし)市広瀬)の柳井勘左衛門が朝廷幕府の御用紙(ごようし)を漉く特権を与えられてからのち、明治時代に入るまでの間、長く檀紙(だんし)を生産し、柳井家を中心として漉かれた備中檀紙の名は広く知られていた。またこの地方では、そのほかにも公家(くげ)や社寺荘園(しょうえん)でそれぞれ紙を漉き上納していたことが文献にみられ、1777年(安永6)刊の木村青竹(せいちく)編『新撰紙鑑(しんせんかみかがみ)』には、備中産の紙として檀紙類のほかに、奉書杉原、三折、半紙ちり紙などをあげている。

[町田誠之]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「備中紙」の意味・わかりやすい解説

備中紙
びっちゅうがみ

備中国 (岡山県) に産した和紙。室町時代末期に周防 (すおう) の柳井から高梁 (たかはし) に移った紙工柳井家が,江戸時代の末まで,宮中や将軍家御用の檀紙 (だんし) をすいた。またこれに似た引合 (ひきあわせ) 紙,杉原紙などの武士階級の愛用紙や越前五箇ですかれた奉書や懐中紙,七九寸 (しちくすん) なども備中でつくられた。明治期に入って生産は急速に衰退した。

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