傾城色三味線(読み)けいせいいろじゃみせん

精選版 日本国語大辞典 「傾城色三味線」の意味・読み・例文・類語

けいせいいろじゃみせん【傾城色三味線】

浮世草子。五冊。江島其磧作。元祿一四年(一七〇一)刊。遊里遊女主題とする短編二四話を収める。京、大坂江戸、鄙(ひな)、湊の各巻に分かれ、各巻頭に遊女の惣名寄等を掲げ、遊里を背景とした好色生活を描く。西鶴の影響が濃く模倣剽窃も目立つが、元祿末の浮世草子界に新風を吹きこんだものとして注目される。「八文字屋本」浮世草子の最初の作品。色三味線

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デジタル大辞泉 「傾城色三味線」の意味・読み・例文・類語

けいせいいろじゃみせん【傾城色三味線】

浮世草子。5巻。江島其磧えじまきせき作。元禄14年(1701)八文字屋刊。遊里と遊女を描いた24話を収める。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「傾城色三味線」の意味・わかりやすい解説

傾城色三味線
けいせいいろじゃみせん

江島其磧(きせき)の浮世草子。1701年(元禄14)八文字屋八左衛門刊。5巻24話。其磧浮世草子の処女作。5巻を京、大坂、江戸、鄙(ひな)、湊(みなと)に分け、遊興の種々相を叙す。作者はこれより先、1699年(元禄12)に役者評判記『役者口三味線』を書いており、本書の横本仕立、巻頭に遊女名寄(なよせ)を出すなどは、この体裁を浮世草子に転用したもので、加うるに「好色」に対し「傾城」を冠して、もって新機軸を出したのだった。文章は西鶴(さいかく)に拠(よ)るところが多いが平明、その平明さと構成の妙が当時の読者の求めに合致し、新機軸と相まって、大好評を博した。この後「傾城」「三味線」を付する作品が続出、其磧自身も浮世草子界を主導した。

[江本 裕]

『『日本名著全集9 浮世草子集』(1928・同書刊行会)』


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「傾城色三味線」の意味・わかりやすい解説

傾城色三味線
けいせいいろじゃみせん

浮世草子江島其磧作。5巻5冊。元禄 14 (1701) 年刊八文字屋本の第1作。5巻を京,大坂,江戸,鄙,湊の各巻に分け,各巻頭に遊女名寄 (なよせ) ,揚屋茶屋などを細見 (さいけん) 風に掲げ,以下に各土地の話を数編ずつ並べている。客と遊女との駆引きを描いたこれらの短編は,いずれも井原西鶴の『好色一代男』『好色二代男』『好色盛衰記』『西鶴置土産』などの焼直しであり,新味はないが,大衆的な味わいが人気を呼び,以後遊里生活を主題とした「三味線物」と呼ばれる浮世草子を次々に生むことになった。

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