(読み)ひが

精選版 日本国語大辞典 「僻」の意味・読み・例文・類語

ひが【僻】

[1] 〘語素〙 人、または人間の部分の名称や行為、状態などに関係のある名詞の上に付けて、正当でないこと、妥当でないことを表わす。「ひが事」「ひが耳」「ひが者」「ひが覚え」など。また、動詞「ひがむ」、形容詞「ひがひがし」などを作る。
[2] 〘名〙
① (形動) 正当でないさま、かたよったさま、変わっているさまなどをいう。
史記抄(1477)一一「西僻とは西のはてのをかしいひがな処ぞ」
② かんしゃくなど正常でない心のたかぶり。
浄瑠璃・傾城阿波鳴門(1768)六「阿波の客が僻起こして」
③ (「非我」とも書く) ばか者。特に遊里で、やぼな客、侍客など。
※談義本・つれづれ睟か川(1783)一「金持自慢する客は非我の随一なり」
④ 男色での若衆のこと。
洒落本・男倡新宗玄々経(1751‐64頃)「若衆をヒガ、ヒガといふは大古の言にして」

ひがみ【僻】

〘名〙 (動詞「ひがむ(僻)」の連用形名詞化)
① ひがむこと。素直に見ないで、疑い曲解すること。また、その見解
源氏(1001‐14頃)賢木「いとど、老いの御ひがみさへ添ひ給に」
集義和書(1676頃)二「老親うちうなづきて得心しぬ。それより後、僻(ヒガミ)もやみ、いかり腹だつ事なし」
② ゆがみ曲がっていること。
※俳諧・父の終焉日記(1801)五月八日「他の一寸のゆがみはとがめて、おのれが一尺のひがみはみゑず」

へき‐・する【僻】

〘自サ変〙 へき・す 〘自サ変〙
① かたよる。偏する。
文明論概略(1875)〈福沢諭吉〉一「心を寛にして一方に僻すること勿るべし」
② ひがむ。ひねくれる。

へき‐・す【僻】

〘自サ変〙 ⇒へきする(僻)

いせ【僻】

〘名〙 似て非であること。まやかし。えせ。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「僻」の意味・読み・例文・類語

へき【僻】[漢字項目]

[音]ヘキ(漢) [訓]ひがむ
本筋からずれて、正しくない。一方に偏する。「僻見僻説僻論
場所が中央から離れている。「僻遠僻陬へきすう僻村僻地
[難読]僻耳ひがみみ僻目ひがめ

ひが【×僻】

正常でないこと。妥当でないこと。まともでないこと。多く、名詞の上に付いて、複合語の形で用いられる。「心」「事」「目」
「阿波の客が―起こして」〈浄・阿波の鳴門
(「非我」とも書く)遊里などで、無粋なこと。また、その者。やぼ。
「あの柳助といふ―は」〈洒・色深猍睡夢〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

今日のキーワード

黄砂

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android