元禄国絵図(読み)げんろくくにえず

日本歴史地名大系 「元禄国絵図」の解説

元禄国絵図
げんろくくにえず

成立 元禄一五年

原本 国立公文書館内閣文庫・東京大学史料編纂所

解説 現在の鹿児島県域にかかわるものとして大隅国絵図(一鋪、三四九×七五〇センチ)・薩摩国絵図(一鋪、四一四×七八一センチ)・日向国絵図(一鋪、四二三×七二六センチ)琉球国絵図(三鋪、大島三一二×五九七センチ・八重山島二六一×五八九センチ・沖縄島三〇五×五八四センチ)がある。元禄国絵図の作製事業は将軍徳川綱吉の元禄一〇年の命によって始まり、同一五年には全部が出そろった。このとき鹿児島藩幕府へ提出したのは薩摩国・大隅国・日向国・琉球国の四ヵ国六鋪分であった。これらはすべて内閣文庫に現存するほか、「此絵図彩色悪付、御調進之御用ニ不相立也」の理由から島津家の控図とされた薩摩国絵図が東京大学史料編纂所島津家文書に残る。また同史料編纂所と鹿児島市磯の尚古集成館には元禄国絵図作製関係の文書史料がある。国絵図には郡界・街道河川船舶航路などが描かれ、それぞれ注記もみられる。個々の村の所在地には、郡ごとに異なる彩色の楕円形の枠を付して村名と石高が記される。ただし元禄国絵図に記された村と村高は当時の郷村の現実を正しく反映させておらず、ほとんどは文禄検地によって把握・公認された御朱印高を基本とした近世初期のもので、寛文四年の郡村高辻帳や天保郷帳とほぼ対応している。ただし両帳にみえない村名が国絵図では枝村扱いで記載されている場合があり、注目される。なお正保国絵図は控図(大隅国欠)が東京大学史料編纂所にあり、天保国絵図は原本すべてが内閣文庫、控図の一部(日向国)が東京大学史料編纂所に残る。原色の印刷本に、鹿児島県教育委員会が平成九年に出版した「元禄一五年国絵図」「元禄一五年薩摩国・大隅国・日向国国絵図」各一枚(解説書付)がある。また琉球国分については「琉球国絵図史料集(沖縄県教育委員会)がある。

元禄国絵図(松前蝦夷地図)
げんろくくにえず

八三×六五センチ 写図彩色 松前藩 元禄一三年 北海道大学附属図書館蔵

解説 松前藩が幕府の命により元禄一三年に郷帳とともに提出した国絵図で、支配の及ばないカラフト島や千島諸島も含んでいる。宝永年間の島巡りの結果作製された正保元年の国絵図とほぼ同じもので、蝦夷島の形は太平洋沿岸を南北に立てて描いた縦長の不格好なものであるが、湾入や岬の表示、各地の地名順序などはおおむね正しく描かれている。当図は大正一二年の関東大震災で焼失した東京大学附属図書館旧蔵の原図を、古地図史家芦田伊人が一〇分の一に縮小しておいたものの写で、原図は約八・二×約六・四メートルの豪華な色彩の大地図であったという。

元禄国絵図
げんろくくにえず

原本 永青文庫

解説 幕命によって元禄一〇年閏二月に開始された改訂国絵図。正保二年の絵図を踏襲し、「一里六寸之積」で墨で星をつけ、郡界を鮮やかに引き、村形の中に村高を記すなど改訂の基本方針に従って作成し、前回以来の論所、古絵図と相違するところは代官・領主に相尋ねて糾して絵図を仕立てた。この絵図の作成には御国絵図御改付而覚帳・肥後国絵図変地帳が用いられた。肥後国絵図は細川綱利が担当した。正保国絵図が陸海交通路を重んじたのに対して、元禄国絵図では国郡図的内容が重んじられた。また絵図の改訂に伴って郷帳も改訂された。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

百科事典マイペディア 「元禄国絵図」の意味・わかりやすい解説

元禄国絵図【げんろくくにえず】

国絵図

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世界大百科事典(旧版)内の元禄国絵図の言及

【国絵図】より

…近世の豊臣政権,江戸幕府が諸大名らに命じて作成・提出させた一国単位の絵図。1591年(天正19)豊臣秀吉が禁裏に献納するという名目で,日本全国の国絵図と御前帳(検地帳)を諸大名らに命じて作成・提出させたことに始まる。それは日本全土を国郡制の枠組みによって掌握する手段であり,同時にきたるべき〈唐(から)入り(朝鮮侵略)〉に向けての国内総動員体制づくりの一環であった。〈諸国御前帳 駒井被請取候覚〉(《視聴草》第57冊)などによって,国絵図が実際に徴収されたことは確実だが,現在までのところこの天正の国絵図は発見されていない。…

※「元禄国絵図」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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