充填塔(読み)じゅうてんとう(英語表記)packed tower

日本大百科全書(ニッポニカ) 「充填塔」の意味・わかりやすい解説

充填塔
じゅうてんとう
packed tower

気体液体、液体‐気体の間で物質移動、熱移動を行わせる装置で、空塔内に種々の充填物packingを詰めた塔である。充填物としては古くは岩石片、コークスが用いられたが、磁製、金属製、プラスチック製のラシヒリングベルルサドル、ポールリングなど種々の形状、大きさのものが市販されている。充填方式としては、径の小さい充填物では不規則充填、径の大きいものでは規則充填が行われている。

[早川豊彦]

充填塔の構造と機能

液が充填物表面上を薄い液膜状に流下し、その間隙(かんげき)を連続相として流れる気体(または他の液体)と接触させ、気‐液間(または液‐液間)の接触面積を大きくし、かつ圧力損失を小さくし、同時に気・液各相の流れに乱れを与えて、物質移動、熱移動の速度を大きくする。通常は、液を塔頂の液分布器から充填物の層上に均一に供給するが、塔内を流下する間に塔壁側に偏流するので、塔中央に液再分布器を設け、層内を均一に流れるようにする。一方、気体は塔底から供給して、充填物とその表面を流下する液膜の空隙を上昇させ気・液を向流に接触させる方式が用いられるが、気・液を同時に塔頂から供給して並流に接触させる方式もある。充填塔による気・液の接触は連続的に行われるため、気・液の濃度(または温度)が連続的に変化する。このような接触を一般に微分接触方式といい、段塔による階段接触と対比される。

 充填塔は気‐液間の接触によるガス吸収蒸留調湿ほかに、液‐液間の接触による抽出にも用いられる。固体触媒吸着剤を詰めた塔も充填塔であるが、これは充填層または固定層とよぶことが多い。

[早川豊彦]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「充填塔」の意味・わかりやすい解説

充填塔
じゅうてんとう
packed tower

気体と液体,液体と液体など異相間の物質移動や熱移動を能率よく行うため,内部に充填物を詰めた塔。異相間の接触面積を大きくし,各相の流れに十分の乱れを与えて,吸収,蒸留,吸着,抽出などの物質移動を効果的に行わせる装置である。普通,塔頂から充填物に沿って流下する液と,塔底から充填物の間隙を上昇する気体を向流接触させるが,並流させることもある。充填物は製造が簡単で安価,ガス流に対する抵抗が小さい,表面積が大きく,液で濡れやすい,重量が軽く,機械的強度が十分にあり,耐熱性,耐食性にすぐれているものが種々考案されている。充填物には,古くはコークスや破砕岩石などを使ったが,20世紀初め,ラッシヒリング,レッシングリング,ベルサドルなどの人工充填物が出現した。また蒸留用に金属製のマクマホン充填物などもできている。その他,スパイラルリング,ポールリング,インターロックスなどがある。

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化学辞典 第2版 「充填塔」の解説

充填塔
ジュウテントウ
packed column

気-液相,液-液相などの異相間の物質移動を効率よく行わせるために,なかに充填物を詰めた塔をいう.工業的には,ガス吸収にもっとも広く用いられているが,蒸留にも,溶剤抽出にも用いられる.また,気体の増湿,減湿,水の冷却など,きわめて用途が広く,構造が簡単で製作が容易な利点がある.異相間の接触面積を増加させ,またガスの圧力損失を小さくするような充填物が考案されている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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