先天性風疹症候群(読み)センテンセイフウシンショウコウグン(英語表記)Congenital RBella syndrome

デジタル大辞泉 「先天性風疹症候群」の意味・読み・例文・類語

せんてんせい‐ふうしんしょうこうぐん〔‐フウシンシヤウコウグン〕【先天性風×疹症候群】

シー‐アール‐エス(CRS)

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六訂版 家庭医学大全科 「先天性風疹症候群」の解説

先天性風疹症候群
せんてんせいふうしんしょうこうぐん
Congenital RBella syndrome
(子どもの病気)

どんな病気か

 風疹ウイルスに免疫のない妊婦が妊娠初期に風疹にかかることにより胎児が感染し、子どもに多様な奇形を生じる先天異常症です。

原因は何か

 風疹ウイルスが原因で、1941年オーストラリアの眼科医グレッグが初めて報告しています。

症状の現れ方

 低出生体重のほか、眼球異常(白内障(はくないしょう)緑内障(りょくないしょう)網膜症(もうまくしょう)小眼症(しょうがんしょう))、難聴、心奇形(動脈管開存症心室中隔欠損症肺動脈狭窄症など)、中枢神経障害(精神発達遅延(ちえん)脳性麻痺(のうせいまひ)小頭症(しょうとうしょう)など)など永久障害を残すものと、血小板減少性紫斑病(しはんびょう)肝脾腫(かんひしゅ)肝炎溶血性(ようけつせい)貧血大泉門膨隆(だいせんもんぼうりゅう)間質性(かんしつせい)肺炎など生後一過性に認められるものがあります。

 異常の程度とその頻度は、ウイルス感染と妊娠の時期の関係によります。本症の発生頻度は、妊娠4週以内では30~50%、5~8週で25%、9~12週で8%、妊娠前期で20%といわれています。

検査と診断

 診断は患児の検体(咽頭ぬぐい液など)からのウイルス分離、患児血清でのIgM高値、風疹特異的IgM抗体の確認が大切です。

治療、予防の方法

 先天性風疹症候群の治療は、おのおのの奇形に対して行うことになります。何よりも大切な予防幼児期風疹ワクチン接種を受け、風疹ウイルスに対する免疫をつくっておくことです。

病気に気づいたらどうする

 ウイルス感染症を専門とする小児科医に相談してください。

浅野 喜造

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改訂新版 世界大百科事典 「先天性風疹症候群」の意味・わかりやすい解説

先天性風疹症候群 (せんてんせいふうしんしょうこうぐん)
congenital rubella syndrome

妊婦の風疹罹患のために出生児に現れる種々の障害を総称して先天性風疹症候群といい,母親が不顕性感染の場合でも起こりうる。風疹は風疹ウイルスによって起こり,一般には軽く経過する病気であるが,妊婦が妊娠初期にかかると胎盤を通して胎児に感染し,流産や種々の奇形発生の原因となる。この症候群は1941年オーストラリアの眼科医グレッグN.Greggによりはじめて報告され注目されたが,その後62年のアメリカにおける風疹の流行で多数の患者が発生し,その詳細が知られた。胎内感染による奇形発生の代表的なもので,その感染時期により種々の奇形を生ずる。風疹は一度かかると終生免疫ができるので,予防は生殖年齢前に一度かかればよいわけで,現在は第Ⅰ期として,生後12~24ヵ月の間に,第Ⅱ期として,就学前の1年間の2回のMRワクチン接種が行われている。
風疹
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知恵蔵mini 「先天性風疹症候群」の解説

先天性風疹症候群

妊娠初期に風疹に罹患した女性の体内で風疹ウイルスが胎児に感染し、出生児に発症する障害のこと。略称、CRS。疾患・傷害は、先天性心疾患、難聴、白内障を主症状とし、網膜症、血小板減少、糖尿病、発育遅滞、精神発達遅滞など多伎にわたる。風疹の流行期における年毎10万出生当たりの発生頻度は、米国で0.9 ~1.6、日本で1.8 ~7.7人。妊娠期における発症率は、妊娠1カ月で50%以上、2カ月で35%、3カ月で18%、4カ月で8%程度と低下していく。2013年には9月初めまでに、日本全国で8人の罹患児が確認された。CRSそれ自体の治療法はなく、ワクチンによる免疫獲得で予防する。妊娠中のワクチン接種は避けるべきなので、妊娠可能な女性はあらかじめワクチンを接種しておくことが望ましい。

(2013-10-10)

出典 朝日新聞出版知恵蔵miniについて 情報

家庭医学館 「先天性風疹症候群」の解説

せんてんせいふうしんしょうこうぐん【先天性風疹症候群】

 妊婦が、妊娠初期に風疹にかかると、障害のある子どもが生まれてくることがあります。これを先天性風疹症候群といいます。
 妊娠1か月以内に風疹にかかると、約50%、妊娠3か月以内の場合は約20%の確率で先天性風疹症候群の子どもが生まれます。妊娠6か月をすぎれば、先天性風疹症候群はおこらなくなります。
 目の異常(白内障(はくないしょう)、小眼球(しょうがんきゅう)、網膜(もうまく)の病変)、聴力の障害、心臓の形態異常(動脈管(どうみゃくかん)の開存(かいぞん)、心室や心房の中隔欠損(ちゅうかくけっそん))、中枢神経系(ちゅうすうしんけいけい)の異常(水頭症(すいとうしょう)、小頭症(しょうとうしょう)、精神発達遅滞)、歯の異常などが子どもにおこるおもな障害です。

出典 小学館家庭医学館について 情報

妊娠・子育て用語辞典 「先天性風疹症候群」の解説

せんてんせいふうしんしょうこうぐん【先天性風疹症候群】

風疹に対する抗体が十分にない女性が妊娠初期に風疹ウイルスに感染したとき、おなかの赤ちゃんに起こる可能性のある病気の総称で、略語では「CRS」です。3大症状は先天性の心臓疾患、難聴、白内障。妊娠中に風疹抗体価検査を行うのは、この病気を防ぎたいからです。発症の可能性は妊娠週数によっても違いますので、不安なときは産婦人科などにきちんと説明を受けましょう。

出典 母子衛生研究会「赤ちゃん&子育てインフォ」指導/妊娠編:中林正雄(母子愛育会総合母子保健センター所長)、子育て編:渡辺博(帝京大学医学部附属溝口病院小児科科長)妊娠・子育て用語辞典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「先天性風疹症候群」の意味・わかりやすい解説

先天性風疹症候群
せんてんせいふうしんしょうこうぐん

風疹

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の先天性風疹症候群の言及

【風疹】より

…俗に〈三日ばしか〉とも呼ばれる。風疹ウイルスの感染によって起こる軽い発疹性伝染病であるが,妊娠初期の婦人が罹患すると,白内障,先天性心疾患,小頭症など各種の奇形や病変(先天性風疹症候群)をもったいわゆる〈先天性風疹児〉が高率に生まれることが知られてから,重要な伝染病としてクローズアップされた。流行は3~10年の間隔でみられ,春に発生の山があり,患者は小学生が多い。…

※「先天性風疹症候群」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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