光学器械工業(読み)こうがくきかいこうぎょう

改訂新版 世界大百科事典 「光学器械工業」の意味・わかりやすい解説

光学器械工業 (こうがくきかいこうぎょう)

光学器械(カメラ,望遠鏡顕微鏡,測量機,測定機,眼鏡など)を製造する工業。レンズプリズムのような光学部品と精密機械部品を組み合わせたり,また近年では電子部品が大幅に組み込まれるようになり精密加工を主とする工業となっている。

光学器械の製造が工業的に確立したのは19世紀後半,ドイツのカール・ツァイス社が光学ガラスの国産化をバックに顕微鏡生産を急増させて以来で,それまではきわめて小規模に望遠鏡,顕微鏡,カメラなどが作られていた。20世紀にはいると光学理論の急速な進展,光学ガラスの多品種化,精密加工技術の進歩により目覚ましい発展を遂げ,後半においてはオプトエレクトロニクス分野(光電素子,レーザー,光学薄膜,光ファイバーなど)が続々と開発され工業化が進められている。光学器械工業の特質としては,(1)光学系設計には複雑で膨大な計算を必要とすること,(2)光学部品に使われる光学ガラスは多品種で厳密な光学的性能が要求されること,(3)他の工業製品に比べて原材料費が少なく,しかも加工工程が複雑で長いため高い付加価値をもつ工業であること,などがある。

日本の光学器械工業は1915-16年ころから始まったとみてよい。とくに軍需用光学器械を国産化するために国の強力な指導によって製造技術が育成され,その優秀性は世界的に認められていた。第2次大戦後はその技術が民需品に受け継がれるとともに,学官民一体となって新技術の開発と工業化に努力を続け,今日では世界有数の光学器械生産国となっている。日本の光学器械工業の特質としては,カメラとその関連商品が9割近くに及んでいること,商品の8割前後が輸出に向けられていること,があげられる。また,カメラ生産を主とする企業においてはポスト・カメラともいうべき新しい産業機器(ロボット,半導体製造機器,自動制御機器),事務用機器(OA機器複写機コンピューター)などに生産分野を広げている。
カメラ
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百科事典マイペディア 「光学器械工業」の意味・わかりやすい解説

光学器械工業【こうがくきかいこうぎょう】

レンズ,プリズム,反射鏡などの光学部品を使用した機器(カメラ,望遠鏡,顕微鏡,測量機など)を製造する工業。光学系の設計,光学ガラス品質と加工などに特殊の技術を要するのが特徴。日本での成立は第1次大戦後。戦時中の研究をもとに第2次大戦後はオプトエレクトロニクス分野を中心に発展が著しい。最大の分野はカメラ工業
→関連項目応用物理学精密機械工業

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