児童精神医学(読み)じどうせいしんいがく(英語表記)child psychiatry

改訂新版 世界大百科事典 「児童精神医学」の意味・わかりやすい解説

児童精神医学 (じどうせいしんいがく)
child psychiatry

小児精神医学pediatric psychiatryともいう。単なる精神病神経症ばかりでなく,広く児童の行動異常を精神医学の側面から理解し,治療的に対処する臨床医学の一分野。成人と同じタイプの児童の精神障害は,19世紀後半から20世紀にかけて多く報告されるようになったが,児童精神医学プロパーの活動の歴史は,20世紀初めアメリカで,それまで賞罰対象でしかなかった少年非行を幼少時からの生い立ちや環境との相互作用から理解し,教育的,治療的にアプローチするようになったことに始まる。その後,児童の心身やその発達をめぐるさまざまな問題も同じように多元的,力動的に理解しようと試みられ,遊戯療法などの治療法や各種の検査法の開発と相まって,児童精神医学として世界中に広まり,1930年代には最初の国際学会が開かれたり,専門機関誌が刊行されるようになって,日本にも波及した。第2次大戦後の日本では,児童福祉法の制定によってその社会的基盤も確立し,精神科医ないし小児科医臨床心理士,社会福祉ワーカーからなる臨床チームを中心に,各領域のメディカルスタッフ,パラメディカルスタッフが参加する児童ケアの臨床実践がなされるようになり,国際交流も盛んである。

 児童精神医学の臨床の対象は0~2歳の乳幼児から17~18歳の青年期までの各年齢層にわたるが,それは児童,青年が身体的,精神的に発達しつつある存在であり,両親や社会によって保護されることを必要とし,家庭や学校によって教育を受けながら社会人へと自立していく途上の存在であるため,成人とは異なったアプローチが必要だからである。扱われる疾患自閉症とか登校拒否(不登校)をはじめ,てんかんや知的障害にもとづく不適応行動,各年代における神経症性疾患,思春期,青年期における精神障害などのほか,チック夜尿症,緘黙症,思春期やせ症(神経性無食欲症)など,さまざまな行動面,情緒面,精神身体面の異常である。
児童心理学
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「児童精神医学」の意味・わかりやすい解説

児童精神医学
じどうせいしんいがく
child psychiatry

小児ないし学童を対象とする精神医学。児童は発達の過程にあるので,その過程に即してみないと症状が理解できない。また,社会的,心理的にも独立した状態でないので,両親を中心とした家族との関係など,生活する場の状況の影響を強く受ける。そのために児童精神医学という領域が生れたが,成人の精神医学より歴史が浅く,20世紀に入って発達心理学の発展に伴い,急速に進歩した。国際児童精神医学会は 1937年に発足した。

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