入来院文書(読み)いりきいんもんじよ

日本歴史地名大系 「入来院文書」の解説

入来院文書
いりきいんもんじよ

原本 東京大学史料編纂所

構成 一帖一七巻四冊(全二四二通)・「清色亀鑑」一二巻・入来院氏系図一巻

解説 薩摩国入来院領主入来院氏の相伝文書。入来院氏はもと相模国御家人渋谷氏で鎌倉時代中期、入来院地頭となり下向土着、入来院氏を称し島津氏拮抗近世には島津氏家臣となる。西遷御家人関係史料・中世在地領主研究史料として重要。早くエール大学教授朝河貫一氏が英訳して外国に紹介、日欧封建制比較研究の素材として珍重された。

活字本入来文書 The Documents of Iriki」(大正一四年刊)、朝河貫一著書刊行委員会編の「入来文書」(昭和三〇年刊)・「入来文書新訂」(昭和四二年刊)がある。いずれも一族庶家文書を含む。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

世界大百科事典(旧版)内の入来院文書の言及

【入来院】より

…一方,渋谷氏は元来相模国渋谷荘(現,神奈川県綾瀬市,藤沢市の一部)に本拠地をもつ東国武士であったが,上述の所領拝領以後13世紀末までに一族の大半が広大,肥沃な入来院に本拠をうつし,惣領制的な同族結合をもって上記の村々に割拠して確固たる支配を築き,南北朝以降は清色村に居城をもつ主家のもとに結束しつつ江戸時代に及んだ。 入来院の一帯は樋脇・入来2筋の小河川をとりまく小平野とそれに流れこむ多数の谷戸の集合から成り立っており,中世在地領主の山村支配のあり方を示すよい典型であるが,地理的環境が比較的よく保存されている上に,現在につづく渋谷氏各家が伝えた豊富な《入来院文書》のために,早くから中世武士と村落研究の宝庫として注目されてきた。すでに大正年間アメリカ合衆国イェール大学教授となった朝河貫一は同文書の翻訳とそれにもとづく中世封建制研究の成果を世界に公にし,いらい欧米の日本封建制研究はこれをおもな拠り所として発達したが,日本においては,第2次大戦後の社会経済史研究の隆盛のなかで,同院は荘園村落,在地領主の惣領制,農民の経営体としての在家,門など地域社会の支配と構造を解明するための宝庫として注目をあび,それらをテーマとする幾多の研究を生むとともに,乱開発による景観破壊をとどめて歴史的景観を維持するための努力も重ねられるようになった。…

※「入来院文書」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android