八十島祭(読み)やそしままつり

精選版 日本国語大辞典 「八十島祭」の意味・読み・例文・類語

やそしま‐まつり【八十島祭】

〘名〙 平安・鎌倉時代天皇の即位後、大嘗会(だいじょうえ)翌年吉日を選んで摂津国難波(大阪市)に勅使を派遣し、海に臨んで住吉神、大依羅(おおよさみ)神、海神、垂水(たるみ)神、住道(すむじの)神などをまつり、勅使が奉持して来た天皇の御衣を入れた箱を振り動かして、国土生成を謝し、治世の安泰を祈る一代一度の神事。国々を巡って神をまつるべきところを、略して行なったものといわれる。やそしまのかみのまつり。やそしま。
延喜式(927)三「八十嶋祭御巫、生嶋巫、并史一人、御琴弾一人〈略〉舎人二人、赴難波津祭之」

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デジタル大辞泉 「八十島祭」の意味・読み・例文・類語

やそしま‐まつり【八十島祭】

平安時代、天皇即位後の大嘗祭だいじょうさいの翌年、吉日を選んで使者摂津難波津に遣わし、生島神いくしまのかみ足島神たるしまのかみ住吉神すみのえのかみなどをまつり、国土の発展皇室の安泰を祈った儀式。八十島神祭。

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改訂新版 世界大百科事典 「八十島祭」の意味・わかりやすい解説

八十島祭 (やそしままつり)

9~13世紀に施行された天皇1代1度の宮廷儀式。即位礼および大嘗祭(だいじようさい)の翌年,摂津国難波津に勅使を派遣し行われる。海辺の祭場に生島(いくしま)・足島(たるしま)の神と住吉の神をまつって,天皇の乳母の典侍(ないしのすけ)が天皇の御衣を収めた箱をゆり動かし,生島の巫(かんなぎ)が祝詞をとなえた。当時難波津には大小さまざまの島が散在しており,八十島祭の名もそれにもとづく。おそらく祭りは島々を天皇の版図としての大八島(おおやしま)に見立て,その霊を御衣に付着させて天皇の身体を活性化し,同時に国土の生成を願ったものであろう。やはり1代1度の大嘗祭と密接に関連しつつ,この祭りによって大八島の主としての資格が完成するとされたらしい。なお八十島祭の記録は文徳天皇代の850年(嘉祥3)からはじまるが,その原型を奈良朝以前に考え,記紀の国生み神話等への投影をみる説も行われている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「八十島祭」の意味・わかりやすい解説

八十島祭
やそしままつり

八十島神祭ともいう。古代,天皇が即位し,大嘗祭 (だいじょうさい) の翌年,吉日を選び,使いを摂津国難波津につかわし,生島神,足島神を主とし,スミノエノカミ,オオヨサミノカミ,海神,タルミノカミ,スムジノカミなどを祀り,御代の安泰と国土の生成発展とを祈った祭り。大仁王会とともに一代一度の臨時の大儀。鎌倉時代に廃絶した。

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世界大百科事典(旧版)内の八十島祭の言及

【神功皇后】より

…かかる初代王の誕生に神功皇后は欠かせない存在であった。
[儀礼的背景,巫女像の投影]
 新羅出兵の物語は,どの程度にせよ大嘗祭の一環である八十島祭(やそしままつり)の投射をうけており,このことが神功皇后の造型と関係する。八十島祭とは,新天皇即位の翌年,難波津の浜で女官らが天皇の御魂代(みたましろ)なる衣服に,統治すべき島々の霊を付着させて健やかな成長を願う哺育の儀礼であり,祭神には住吉大神も含まれていた。…

※「八十島祭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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