公・大宅(読み)おおやけ

精選版 日本国語大辞典 「公・大宅」の意味・読み・例文・類語

おお‐やけ おほ‥【公・大宅】

〘名〙 (「やけ」は「家・宅」。「おおやけ」の原義は、大きな家)
① 大きな家。屯倉(みやけ)などの大きな建築物。
朝廷政府官庁幕府
書紀(720)天武即位前(北野本訓)「若し仕へて名を成さむと欲ふ者は、還りて司(オホヤケ)に仕へよ」
天皇皇后中宮
※竹取(9C末‐10C初)「かぐや姫〈略〉いみじく静かに、おほやけに御文(ふみ)奉り給ふ」
国家。社会。
※書紀(720)大化二年八月(北野本訓)「奥に、今の御寓(あめのしたをしらす)天皇より始めて、臣、連等に及るまでに所有(たもて)る品部は、悉に皆罷めて、国家(オホヤケ)の民と為宜し」
⑤ 公的なこと。政治に関すること。
⑥ 表むき。表ざた。表だったこと。
暴君へ(1916)〈有島生馬〉「宮内大臣某子爵夫人との関係が公(オホヤ)けになった」
⑦ (形動) 公平であること。私情のないさま。
※評判記・難波物語(1655)「詞うるはしく、論おほやけなり」
⑧ (形動) 金持であること。また、そのようなさまや人。財産家。資産家。
※虎寛本狂言・米市(室町末‐近世初)「去ながら、こなたはおほやけな事でござれば」
[語誌](1)広壮な貴人の邸宅の意から、最高権力者としての天皇が住む宮殿をさすことになり、やがてそこに住む天皇を、さらには朝廷、政府、国家、社会をさす語へと変化していったものと考えられる。
(2)国家・朝廷といった概念も、すでに上代に認識されているが、一般的には、平安時代以降、朝廷に仕える政務を「公事」と認識して「おほやけわたくし(公私)」などと区別する感覚が定着した。
(3)後代になると、⑦⑧のような意味も生じるが、社会的な公正・安定性から派生したものであろう。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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