公用語(読み)こうようご

精選版 日本国語大辞典 「公用語」の意味・読み・例文・類語

こうよう‐ご【公用語】

〘名〙
公用文の用語。
② 国内に複数の言語が用いられている国家で、その国の正式の国語として認められている言語。また、国際間に設けられた公的機関で、法律的効力を持つものとして正式に認められている言語。
※高知日報‐明治二〇年(1887)一月一四日「我国にても遠からぬ内に内外人の雑居を許さるるならんが、雑居後の公用語は是までの通り日本語のみと限らるべきか」

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デジタル大辞泉 「公用語」の意味・読み・例文・類語

こうよう‐ご【公用語】

ある国や地域で、おおやけの場での使用が定められている言語。また、国際機構国際機関で、おおやけの場での使用が定められている言語。一つの言語とは限らない。
[補説]国際連合の公用語は、中国語英語フランス語ロシア語スペイン語アラビア語の六つ。

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改訂新版 世界大百科事典 「公用語」の意味・わかりやすい解説

公用語 (こうようご)

公の場,すなわち,行政,教育,裁判などにおいて用いられることが認められている言語。通常は国単位で定められる。国の公用語は国語とも呼ばれる。日本のように,方言差はありながらも全国的に一言語だけが話されているといえるような国では,とくに法的に公用語を指定する必要はないが,一国内に複数の言語が話されている場合はいずれかを公用語とする必要が生ずる。ただし1言語のみを公用語とする場合と,複数の言語を公用語とする場合がある。フランスなどは前者の例であり,ベルギーなどは後者の例である。複数の言語が公用語とされる場合,まったく平等に扱われることも,なんらかの序列をつけられることもありうる。話し手人口が多く,政治的・文化的用途に必要な語彙を既に保有し,正書法を有するような言語が公用語に選ばれやすいが,種々の政治的要因などがからむことが多い。ある言語を公用語に制定しようとする時,その言語が他に比して圧倒的優位にあるとか,それを母語として話す人口は多くないが既に全国的共通語として用いられているとかといった場合を除き,しばしば国内対立の要因となる。なぜならば,その言語を母語とする人々とそれ以外の人々との間に,政治的不平等や実生活面の不平等が生み出されがちだからである。旧植民地諸国においては,民族語のうちのいずれをも公用語とする条件のないままに独立を迎え,旧宗主国の言語を公用語とせざるをえなかった国々が多い。なお,国としての公用語のほかに,各地方ごとの公用語を認めている国もある。たとえば,ザイール(現,コンゴ民主共和国)では国語(フランス語)のほかに,四つの言語が地方公用語として機能しているが,それら4言語はもともと土着語を基盤とする広域共通語であった。その他,公用語とはいえないが,その言語で放送が行われることになっているものとか,教育(特に,初等教育段階)において用いられることが認められた言語とかも存在する。
言語政策
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「公用語」の意味・わかりやすい解説

公用語
こうようご

公の文書や公の場での会話に用いられることが認められた言語。日本のように、一つの国のなかで一言語しか話されていないといえる状態である場合、当然その言語(ただし、いずれかの方言をもとにしたもの)が公用語(国語)となるが、複数の言語が話されている場合、そのうちのどれかを公用語と定める必要が生じる。国によってそうした公用語が一つである場合と、複数である場合がある。

 多言語の国では、どの言語を公用語とするかがしばしば紛争の種となる。その理由の一つは、公用語を使いこなせることが社会的地位を保証する要件になることが多く、その公用語を母語とする集団が圧倒的に有利になるという点にある。また、国として複数の言語を公用語としても、なんらかの順序づけを与えることもありうる。さらに、国内に話される言語の数が多く、しかも土着語で国全体の共通語として発達しているものがない国では、国の公用語のほかに地方公用語をいくつか認めている場合がある。たとえばザンビアアフリカ)においては、国の公用語(国語)は英語であるが、いくつかの土着言語(たとえば、ベンバ語、ニャンジャ語、ロジ語など)を地方公用語として認めている。これらはもともと地方共通語として力をもっていたものであるが、そのいずれもが国全体の共通語にはなりえないため、旧宗主国の言語を国語とする一方、このような措置をとったものと考えられる。同様の事情は隣国コンゴ民主共和国(旧ザイール)などにも認められる。

湯川恭敏

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百科事典マイペディア 「公用語」の意味・わかりやすい解説

公用語【こうようご】

ある国家が政治,行政,法廷などで文書,口頭で公式に用いる言語。数種の言語を公用語に定めている国もある。たとえばスイスではドイツ語,フランス語,イタリア語,レト・ロマンス語が公用語。ただし公用語の地位は法によって制定されている場合と慣例による場合がある。→言語政策標準語国語
→関連項目言語法

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「公用語」の意味・わかりやすい解説

公用語
こうようご
official language

ある国家で公式の使用のために定められた言語。多くの場合,その国の国語と一致するが,多民族国家などの場合,国語以外の言語も公用語として認められることがある。たとえばシンガポールではマレー語を国語と定めているが,そのほかに中国語,タミル語,英語が公用語として認められている。インドではヒンディー語が国語であるが英語も公用語として認められ,さらに州ごとに公用語が存在する。 (→インド諸語 )

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世界大百科事典(旧版)内の公用語の言及

【言語政策】より

…国家と民族言語の間には次のような関係がある。(1)1言語が多国家で用いられる場合 たとえばドイツ語はドイツ,オーストリア,スイスなどで公用語とされている。(2)1言語がある1国家だけで用いられる場合 日本語と日本,ノルウェー語とノルウェーにその例を見る。…

【国語】より

…一般には〈日本語〉の意味で使われているが,〈何ヵ国語も話せる〉というような場合は,他と異なる記号の体系としての言語をさす。しかしより厳密にそれぞれの国の自国語という意味では,ある国家の公的な言語をさし,〈国家語〉あるいは,〈公用語〉ともいう。アイヌ語はこの意味で国語ではない。…

※「公用語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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