公開裁判(読み)こうかいさいばん

精選版 日本国語大辞典 「公開裁判」の意味・読み・例文・類語

こうかい‐さいばん【公開裁判】

〘名〙 一般公衆が傍聴機会をもち得る法廷で行なわれる裁判
日本国憲法(1946)三七条「被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する」

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改訂新版 世界大百科事典 「公開裁判」の意味・わかりやすい解説

公開裁判 (こうかいさいばん)

裁判を公開して行うこと。一般国民に審判の傍聴を許すことは,裁判所の手続を国民の監視の下におくことにより,司法の公正な運用を保障するものである。とりわけ刑事裁判では,これによって裁判に対する国民の信頼を保持するという重要な意味をもつ。幸徳秋水らが死刑判決を受けた大逆事件(1910)の裁判などは,公開審理のなかった不幸な事例であった。近世初頭の絶対王政下で典型的に見られた糺問手続においては密室の審判(秘密裁判)が行われていたが,フランス革命によって公開主義が確立された。日本では,旧憲法にその保障規定が設けられ(59条),さらに現憲法は,一般的な保障規定(82条1項)とともに,とくに刑事被告人の公開裁判を受ける権利を保障している(37条1項)。例外的に非公開審理があることについては,〈公判〉の項目を参照されたい。国民に開かれた司法であるということは,裁判についての報道をも自由とする。ただ,法廷の秩序維持,訴訟関係人の名誉の保護,あるいは心理的圧迫の軽減などの見地から,録音や写真撮影は規制されている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「公開裁判」の意味・わかりやすい解説

公開裁判
こうかいさいばん
Öffentlichkeitsentscheidung

一般国民の傍聴の自由の保障のもとに行なわれる裁判。恣意的な裁判を排し,国民の権利,自由を保護するうえで重要な原則。日本国憲法は「裁判の対審及び判決は,公開法廷でこれを行ふ」 (82条1項) と規定し,さらに刑事被告人については「公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利」 (37条1項) を保障している。もっとも,裁判官の全員一致で,公序良俗を害するおそれがあると決した場合には,対審は公開しないで行なうことができるが,しかし政治犯罪,出版に関する犯罪または憲法第3章で保障する国民の権利が問題となっている事件については,必ず公開で行なわなければならないことになっている (82条2項) 。裁判所の行なうものであっても,非訟事件の裁判などは司法作用ではないので,非公開で行なっても違憲ではないとされている。公開すべきにもかかわらずに公開しないで審理または判決がなされた場合には,その判決は上訴によって取り消される (民事訴訟法) 。

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世界大百科事典(旧版)内の公開裁判の言及

【公判】より


[公判期日の手続]
 公判期日の手続は公判廷,すなわち公開の法廷で行われる。憲法により,刑事被告人は公開裁判を受ける権利を保障されている(37条1項)。ただ,裁判所が,裁判官の全員一致で,公の秩序または善良の風俗を害するおそれがあると決したときには,審理を非公開にできる。…

※「公開裁判」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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