六斎念仏(読み)ろくさいねんぶつ

精選版 日本国語大辞典 「六斎念仏」の意味・読み・例文・類語

ろくさい‐ねんぶつ【六斎念仏】

〘名〙 京都中心として紀伊国(和歌山県)・大和国奈良県)・近江国滋賀県)・山城国京都府)・若狭国福井県)などで行なわれている念仏踊の一つ。もとは鉦(かね)を叩き念仏を詠唱するものであったが、笛・太鼓を鳴らし、踊り獅子舞などを伴うものになっている。六斎の名は六斎日に行なわれたことによるといわれるが、多くは盂蘭盆、またはそれと春秋彼岸の年三回、あるいはこれに二月の涅槃と一〇月の十夜を加えて年五回行なわれたり、また、毎月一回の念仏講で行なう所もある。《季・秋》
咄本・昨日は今日の物語(1614‐24頃)上「南無阿彌陀南無阿彌陀と六さい念仏高々といたしければ」

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デジタル大辞泉 「六斎念仏」の意味・読み・例文・類語

ろくさい‐ねんぶつ【六斎念仏】

念仏踊り一種。太鼓・かねを打って念仏を唱えるもの。もと、六斎日に修した踊り念仏に由来するという。現在は京都を中心に、多く盆または地蔵盆に行われる。 秋》

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「六斎念仏」の意味・わかりやすい解説

六斎念仏
ろくさいねんぶつ

盆または地蔵盆を中心に、京都地方に行われる念仏踊。六斎とは仏教でいう六斎日のことで、月のうち8、14、15、23、29、30の6日をいい、昔は悪鬼が出て命を奪う不吉の日とされ、この日に鉦(かね)をたたき踊念仏を修したという。発生は空也上人(くうやしょうにん)といい、現在では空也堂系と干菜(ほしな)寺系がある。六斎念仏は発願(ほつがん)、回向唄(えこううた)、弥陀願唱(みだがんしょう)、念仏、結願(けちがん)などの本来の念仏のほかに、余興風に各種の曲が演じられる。それらは江戸時代に能、歌舞伎(かぶき)、長唄(ながうた)、獅子舞(ししまい)、万歳、願人(がんにん)坊主などの芸能を自由に取り入れくふうしたもので、芸能的・娯楽的な六斎に発展した。演目には「道成寺(どうじょうじ)」「石橋(しゃっきょう)」「八島(やしま)」「鉄輪(かなわ)」「娘道成寺」「越後(えちご)獅子」「種蒔三番叟(たねまきさんばそう)」「阿古屋(あこや)」「和唐内(わとうない)」「岩見重太郎」など。楽器は笛、鉦、摺鉦(すりがね)、大太鼓、豆太鼓を用い、服装はそろいの浴衣(ゆかた)が多い。京都市内の吉祥院(きっしょういん)六斎、千本閻魔(えんま)堂六斎などは国の重要無形民俗文化財に指定されており、このほかに京都府下から滋賀県や福井県の若狭(わかさ)にかけても残存している。

[渡辺伸夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「六斎念仏」の意味・わかりやすい解説

六斎念仏
ろくさいねんぶつ

浄土宗西山派の僧,道空の創案といわれる踊念仏で,六斎日に行われたのでこの名がある。のちこれが盆踊りと結びつき,京都を中心に広く行われ,現在も形を変えて残っている。

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