共同抵当(読み)きょうどうていとう

精選版 日本国語大辞典 「共同抵当」の意味・読み・例文・類語

きょうどう‐ていとう ‥テイタウ【共同抵当】

〘名〙 一個債権担保として数個不動産の上に抵当権を設定すること。土地とその上の建物を同一の債権の担保とする場合など。

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デジタル大辞泉 「共同抵当」の意味・読み・例文・類語

きょうどう‐ていとう〔‐テイタウ〕【共同抵当】

同一の債権の担保として数個の不動産の上に抵当権を設定すること。

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改訂新版 世界大百科事典 「共同抵当」の意味・わかりやすい解説

共同抵当 (きょうどうていとう)

同一の債権の担保として数個の不動産の上に抵当権を設定すること(民法392条,不動産登記法122条以下)。建物とその敷地のように,経済的に一体と見られる不動産に同時に抵当権を設定する場合に使われるほか,数個の不動産を一括して担保の目的とすることにより担保価値を集積し,あるいは一部の不動産の価額下落等による危険を分散するために用いられる。この場合,共同抵当権者は自由に競売する不動産を選ぶことができるのが原則である。例えば,100万円の債権を持つ債権者甲が,債務者所有の不動産A,B,C(価格はそれぞれ100万円,60万円,40万円)を共同抵当にとった場合,甲はA,B,Cを同時に競売することも,任意にある不動産(例えばA)のみを競売することも自由である。このように共同抵当権者にとっては,共同抵当は便利であるが,例えばAに50万円の債権を持つ後順位抵当権者乙がいる場合,甲がAのみを競売して債権全額弁済をうけると,乙はまったく配当をうけられないことになる。このような後順位抵当権者や,一般債権者と共同抵当権者との利益を調整するため,民法は次のような制度を採用している。すなわち,(1)上例で,A,B,C3個の不動産が全部競売されて同時に配当が行われる場合(同時配当)は,甲は任意の不動産の代金だけから弁済をうけることは許されず,甲の債権はA,B,Cの価格に案分して,各不動産から配当をうける(Aから50万円,Bから30万円,Cから20万円)。したがって乙もAの代金の残額で債権の満足を得ることができる。(2)ある不動産だけが競売されてその代金を配当する場合(異時配当),甲は任意の不動産(例えばA)を選んで競売し,その代金から債権全額の弁済をうけることができる。その代り,その不動産の後順位抵当権者乙は,同時配当の場合に甲がB,Cから配当をうけたであろう額まで(すなわち,Bにつき30万円,Cにつき20万円),甲に代位して,B,C上に甲の有する抵当権を行使することができる(したがって,同時配当の場合と同じ結果になる)。

 共同抵当は,その目的不動産の一部が第三者の所有である場合や複数の共同抵当が順位を異にして交錯する場合等にきわめて複雑な法律関係を生じ,とりわけ根抵当の場合に著しい。そこで根抵当権については,その特性も考慮して,上のような規定が適用される共同根抵当の成立要件は厳格に制限されている(民法398条ノ16以下)。
抵当権
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「共同抵当」の意味・わかりやすい解説

共同抵当
きょうどうていとう
Gesamthypothek

同一の債権の担保として数個の不動産の上に設定される抵当権(民法392,393条)。総括抵当ともいう。通常は,土地とその上の建物とが共同抵当とされ,不動産登記法は,共同担保の設定手続などについて規定を設けている(83条1項4号,91)。たとえば,債権者 Aが債務者 Bに対して有する自己の債権を担保するために,B所有の甲土地と乙土地を共同抵当にとった場合,Aは不動産を差し押さえ(→差押え),競売にかけて,買受人が納付した売却代金から優先弁済(→弁済)を受けることができる。この際,Aは,甲と乙を同時に競売にかけて双方から不動産の価額に比例して優先弁済を受けてもよいし,まず甲のみを競売にかけて優先弁済を受け,その後,不足分について乙を競売にかけて優先弁済を受けてもよい。前者を同時配当,後者を異時配当という。民法は,同時配当の場合と異時配当の場合とで,関係する債権者の配当結果が同じになるように,後順位抵当権者に代位を認めている(392条2項後段)。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「共同抵当」の意味・わかりやすい解説

共同抵当
きょうどうていとう

同一の債権の担保として、数個の不動産(土地と建物は別個に計算される)のうえに抵当権を設定すること。総括抵当ともいう。債権者は、どの不動産からでも債権の全額で優先弁済を受けることができるのが原則となっている。しかし、そのために、競売された不動産の二番抵当権者が不当に損をするおそれがある。そこで民法では、このような二番抵当権者は、一定の金額まで一番抵当権者のかわりに他の不動産について抵当権を行使できるものとしている(民法392条・393条)。

[高橋康之]

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