共振(読み)キョウシン(英語表記)resonance

翻訳|resonance

デジタル大辞泉 「共振」の意味・読み・例文・類語

きょう‐しん【共振】

[名](スル)振動体に固有振動数と等しい振動が外部から加わると、振動の幅が大きくなる現象。主に電気振動でいい、音などの場合は共鳴ということが多い。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「共振」の意味・読み・例文・類語

きょう‐しん【共振】

〘名〙
① 電気振動の共鳴現象。ある周波数の電気振動、または入力信号に対して、電気回路インピーダンス最大値または最小値を示す現象。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「共振」の意味・わかりやすい解説

共振 (きょうしん)
resonance

振子などの振動する物体に外から周期的な力を加えるとき,その振動数が物体の固有振動数に近いほど外力のする仕事が有効に吸収されて物体の振動が激しくなる現象。共鳴ということもある。振動数の等しい音叉を二つ並べておき,一つを鳴らすと他の一つも鳴り始めるのはその一例である。バイオリンなどの弦楽器では,胴が弦の振動に共振することによって音のひびきを良くしている。また地震のとき,地震波の振動数が建物などの固有振動数と一致すると共振して激しく振動し,大きな損害を生ずることがある。コイルコンデンサー,抵抗をつないで作った共振回路は,コイルのインダクタンス,コンデンサーの容量,抵抗の値で定まる周波数の交流電圧を加えると共振して強い振動電流を生ずる。この性質は,いくつもの周波数の異なる電波の中から一つを選んで受信するラジオなどの同調回路に利用される。
執筆者:

機械装置は一般に往復または回転の動力伝達装置をもち,一定の振動数で定常的に運転されることが多いので,これらの運動の振動数が機械と基礎からなる振動系の固有振動数の一つと近い値であれば,純粋に共振に近い現象が起こる。作用する力の振動数が分かっているので,振動系の固有振動数がこれと離れるように機械および基礎を設計することが基本となる。基礎の質量を大きくすれば固有振動数は低くなり,基礎の接地面積を増やしたり,基礎を杭で支持したりすれば固有振動数は高くなる。機械振動が基礎を介して周囲に伝わらないようにするため,減衰性の大きな材料を選んだり,吸振器を配置したり,機械の支持構造をくふうしたりすることが行われる。19世紀には,人や家畜が渡ることによる振動でつり橋が落ちる事故が相次ぎ,とくに兵隊が歩調をそろえて行進したために起こった共振に近い現象が落橋の原因となったものが多かった。1855年J.A.レーブリングにより建設されたナイアガラ鉄道橋は2階建てで1階は歩行者用に供されていたが,その入口には〈隊伍を組み歩調を合わせて行進する者は50ドルから100ドルの罰金刑に処す〉と掲示されていたという。最近でも,歩行者の歩調の周期に近い固有周期をもつ歩道橋が揺れて,構造的に危険はないものの心理的な不安感を与えて問題となった例がある。地震や風などの自然界の外力は完全に周期的ではないが,その影響も共振の概念をもとに考えると理解しやすい。軟らかい地盤上では地震時に比較的長い周期の揺れが卓越するが,これは地表層を一つの振動系と考え,地震波のうちで地表層の固有周期に近い成分が選択的に増幅されると考えられる。また,関東大震災の際に,地盤が比較的硬く短周期の揺れが卓越したと思われる東京の山の手では短周期構造物の土蔵の被害率が高く,逆に下町では2階建て家屋の被害率が高かったことも,地震動と構造物の共振的な現象で説明できよう。つり橋,煙突,塔などのたわみやすい構造物は風の作用を受けて有害な振動を起こすことがある。1940年,当時世界第3位の長さを誇ったアメリカのタコマ・ナローズ橋が,完成4ヵ月後に風速19m/s程度の風で崩壊した例はとくに有名である。風による構造物の振動については,従来共振現象で説明されているが,流体中に置かれた物体から周期的に渦(カルマン渦)が剝離(はくり)する現象が振動に強く関与するので,最近では風と構造物の複雑な相互作用に基づく一種の自励振動と考えられている。大型構造物の固有周期を大幅に変えたり,減衰を増やしたりすることは困難であり,外力にはいろいろな周期の成分が含まれているのがふつうであるから,地震や風などによる動的効果を考えた設計が重要で,また,起振機を用いた実験も行われる。
耐震構造 →耐風設計
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「共振」の意味・わかりやすい解説

共振
きょうしん

振り子のおもりに左右に振動する外力を加えた場合に、外力の振動数が振り子の固有振動数(抵抗ゼロの場合の振動数)に一致すれば振り子は勢いよく振れる。これを共振または共鳴という。

 幼名を多聞丸と称した少年の日の楠木正成(くすのきまさしげ)は、かすかに揺れる重い釣鐘が後退するたびごとに指で押すことを繰り返し、ついには大きく鐘を揺り動かすことができたという話が伝わっているが、これはこの共振を応用したものである。共振の外力が質点に単位時間にする仕事(この仕事は質点に単位時間に吸収されるエネルギーに等しい)の平均値は、外力の振動数が質点の固有振動数と一致するときに最大になる。単振り子の糸の上端を持って、振り子の固有振動数に等しい振動数で左右に振れば、糸の上端の変位の振幅は小さくても、振り子のおもりは勢いよく振れる。この場合には糸の上端とともに左右に振動する座標系は慣性系に対して加速度をもつので、その結果として、振り子のおもりには振動的な見かけの外力が働くことになるのである。外力の振動数が振り子の固有振動数を中心とする一定の幅の振動数領域のなかにあれば、振り子はかなり勢いよく振れる。この振動数領域の幅を共振の幅という。すなわち外力の振動数を横軸にとり、外力が質点に単位時間にする仕事の平均値を縦軸にとって描いた曲線を共振曲線とよぶ。この曲線の最大値は、振動数が固有振動数に一致するところにあるが、この最大値の半分の値を与える振動数と固有振動数との差を共振曲線の半減幅という。質点に働く抵抗力が質点の速度に比例する場合には、この比例係数は共振曲線の半減幅に比例する。すなわち、抵抗力の速度に対する比例係数が小さいほど、共振曲線は鋭いピークをもつ。共振がおこるとき、質点の振動の振幅を最大にするような外力の振動数は、質点の固有振動数よりもいくらか低い値をとる。

 底のある管の口に振動している音叉(おんさ)の脚を近づけておき、管の中に水を注いでいくと、管内の空気柱はある長さになったときに強い音を発する。このとき、空気柱は音叉の振動に共振し、音波を外部に放出するのである。音叉はその柄を共鳴箱につけて使用することが多い。共鳴箱の中の空気柱の固有振動数は音叉の基本振動数にほぼ一致する。しかしこの空気柱は音叉の倍振動と一致する固有振動数をもたない。それで、音叉の基本振動に共鳴箱の中の空気柱が共振し、この振動数の純粋な強い音が外部へ放出されることになる。コイルL、コンデンサーC、電気抵抗Rを直列につなぎ、交流電源(低周波発振器など)に接続した場合、交流電源の振動数が抵抗Rがゼロの回路(LC回路)の固有振動数と一致するとき、回路には最大の電流が流れる。これは電気振動における共振である。

[飼沼芳郎]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「共振」の意味・わかりやすい解説

共振【きょうしん】

一般には共鳴と同じだが,特に電気振動の共鳴をさすことが多い。共振を実現する電気回路を共振回路といい,発振同調に利用される。
→関連項目Q値

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

栄養・生化学辞典 「共振」の解説

共振

 →共鳴

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「共振」の意味・わかりやすい解説

共振
きょうしん

共鳴」のページをご覧ください。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の共振の言及

【共鳴】より

…広くは共振と同じ意味であるが,音についての共振をとくに共鳴と呼ぶことが多い。管や箱,あるいは室などの中の空気は,その形状,寸法および境界面の吸音特性に応じて,特定の周波数と振動状態とをもった無限に多くの固有振動をもっている。外から加えられた音の周波数が,固有振動の周波数の一つに一致すると,非常に激しい振動状態を起こし,音圧,あるいは粒子速度が大きな値を示すようになる。この現象が共鳴である。管の中の気柱の共鳴は,各種の管楽器で利用されている。…

【共鳴】より

…広くは共振と同じ意味であるが,音についての共振をとくに共鳴と呼ぶことが多い。管や箱,あるいは室などの中の空気は,その形状,寸法および境界面の吸音特性に応じて,特定の周波数と振動状態とをもった無限に多くの固有振動をもっている。…

【共鳴状態】より

…したがって両方の振動数が近い場合には,振動の振幅が非常に大きくなる。この現象は共振と呼ばれ,また,音に関する共振の現象は共鳴として古くから人の注意をひいていたことから共振のことを共鳴ということもある。素粒子の世界にも,これに似た現象が見られる。…

【ばね】より

…このエネルギーはばねのもつ弾性に基づく弾性エネルギーである。(3)共振 ばねに物体をつけ,この物体をもってばねを伸ばしたのち急に手を放すと,この物体は一定の振動数でしばらくの間振動を続ける。この振動数をばねの固有振動数という。…

※「共振」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android