(読み)かねる

精選版 日本国語大辞典 「兼」の意味・読み・例文・類語

か・ねる【兼】

〘他ナ下一〙 か・ぬ 〘他ナ下二〙
[一]
① 二つ以上を合わせる。合わせ持つ。
※金剛般若経讚述仁和元年点(885)「故に、行、両種の見を詠(カネ)たり」
② 主となることのついでに他のことをも合わせおこなう。特に、本務以外に他の仕事も合わせてつとめる。兼任する。
書紀(720)天武九年七月(北野本訓)「納言(ものまうすつかさ)(カネ)宮内卿(みやのうちのかみ)五位(いつつのくらゐ)舎人王(とねりのおほきみ)
破戒(1906)〈島崎藤村〉一「蓮華寺では下宿を兼ねた」
③ 将来の事をも考慮に入れる。予定する。予想する。あらかじめ心配する。
万葉(8C後)一四・三四一〇「伊香保ろの岨(そひ)の榛原ねもころに将来(おく)をな加禰(カネ)そ現在(まさか)し善かば」
源氏(1001‐14頃)夕顔長生殿のふるきためしはゆゆしくて、はねをかはさむとはひきかへて、彌勒のよをかねたまふ」
④ 遠慮する。気がねをする。
曾我物語(南北朝頃)六「虎は又、十郎が心をかねて衣ひきかづきうちふしぬ」
※春の鳥(1904)〈国木田独歩〉三「母親が兄の手前を兼(カ)ねて折り折り痛(ひど)く叱ることがあり」
[二] (補助動詞として用いられる。動詞の連用形に付いて)
① …し続けることができない。…しようとしてもできない。
※万葉(8C後)一・七二「玉藻(たまも)刈る沖へは漕がじしきたへの枕のあたり忘れ可禰(カネ)つも」
※源氏(1001‐14頃)帚木「隈なきものいひも、さだめかねていたくうちなげく」

けん【兼】

〘名〙
① かけもちをすること。主たる官職ほかに他の官職をかねること。
令義解(718)選叙「凡任両官以上者。一為正。余皆為兼」
② (接続詞的に用いて) 前項事柄機能後項の事柄の機能とを合わせもっていることを表わす。
※内地雑居未来之夢(1886)〈坪内逍遙〉八「通弁兼(ケン) Clerk (書記)の職に就きぬ」

が・ぬ【兼】

〘他ナ下二〙 (補助動詞として用いられる) 「かぬ(兼)」の上代東国方言。…するにたえない。
※万葉(8C後)一四・三四四二「東路(あづまぢ)の手児(てご)の呼坂(よびさか)越え我禰(ガネ)て山にか寝むも宿りはなしに」

けん‐・す【兼】

〘他サ変〙 (「けんず」とも) 兼ねる。兼任する。あわせ持つ。
※平家(13C前)二「右衛門督を兼して、検非違使の別当になり給ふ」

か・ぬ【兼】

〘他ナ下二〙 ⇒かねる(兼)

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デジタル大辞泉 「兼」の意味・読み・例文・類語

けん【兼】[漢字項目]

常用漢字] [音]ケン(呉)(漢) [訓]かねる かねて
二つ以上のものをあわせる。かねる。「兼業兼職兼任兼用
前もって。「兼題
[名のり]かず・かた・かぬ・かね・とも

けん【兼】

かけもちすること。かねること。「首相外相」「食堂居間」

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