内匠寮(読み)ないしょうりょう

精選版 日本国語大辞典 「内匠寮」の意味・読み・例文・類語

ないしょう‐りょう ナイシャウレウ【内匠寮】

〘名〙 (「内匠(たくみ)寮」の音読み)
令外官司で、中務省(なかつかさしょう)に属し、宮中器物工匠のことをつかさどり、殿舎装飾などにあたった役所。神亀五年(七二八設置うちのたくみのつかさ。
御伽草子梵天国(室町末)「梵天王自筆の判を参らせければ、不思議さよとて、ないしゃうれうの蔵に納められけり」
② 明治一八年(一八八五宮内省に置かれた一部局。帝室の土木、工匠や庭園のことをつかさどった。

たくみ‐りょう ‥レウ【内匠寮】

〘名〙
② 宮内省の一部局。明治一八年(一八八五)に設置され、建築・土木・庭園に関することをつかさどった。庭園に関することは、同三七年から大正三年(一九一四)の間、別に内苑寮(はじめは「局」)として分離したこともある。昭和二〇年(一九四五)、主殿寮(とのもりょう)の設置により廃された。〔宮内省官制(明治四〇年)(1907)〕

うちのたくみ‐の‐つかさ【内匠寮】

〘名〙 令外(りょうげ)の官。中務省に属して調度の製作、装飾に従った。神亀五年(七二八)設置。のちに典鋳司(てんちゅうし)画工司(えだくみのつかさ)漆部司(ぬりべのつかさ)を併合。職員に頭以下の四等官のほかに史生八人、駈使丁二〇人などがある。たくみりょう。
※三代格‐四・神亀五年(728)七月二一日「内匠寮頭一人」
※二十巻本和名抄(934頃)五「内匠寮〈宇知乃多久美乃豆加佐〉」

たくみ‐づかさ【内匠寮】

※源氏(1001‐14頃)桐壺「さとの殿は、すりしき・たくみづかさに宣旨くだりて、になうあらためつくらせたまふ」

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デジタル大辞泉 「内匠寮」の意味・読み・例文・類語

たくみ‐りょう〔‐レウ〕【内匠寮】

令外りょうげの官中務なかつかさに属し、宮中の器物・造営、殿舎の装飾をつかさどった役所。うちのたくみのつかさ。たくみづかさ。
宮内省の部局の一。庭園・土木・建築に関することを管掌。

たくみ‐づかさ【内寮】

内匠寮たくみりょう1

うちのたくみ‐の‐つかさ【内寮】

たくみりょう(内匠寮)

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改訂新版 世界大百科事典 「内匠寮」の意味・わかりやすい解説

内匠寮 (たくみりょう)

728年(神亀5)設置の令外官。中務(なかつかさ)省に所属し,頭・助・大允・少允・大属・少属のいわゆる四等官,その下に史生・使部,各種匠手(たくみ)を置き,巧匠・技芸の事をつかさどる。〈内〉の字を用いることから知られるように,もっぱら宮廷の需要に応じるための官庁。774年(宝亀5)大蔵省の典鋳司を併合,796年(延暦15)錦・綾・羅(うすはた)等を織る匠手20人を中務省の内蔵寮へ分割,808年(大同3)中務省の画工司,大蔵省の漆部(ぬりべ)司を併合。所属の各種工人は,画工,細工,金銀工,玉石帯工,銅鉄工,鋳工(いもじ),造舟工,造屛風工,漆塗工,木工,轆轤(ろくろ)工,埝(にう)工,革筥(かわばこ)工,黒葛(くろつづら)工,柳箱(やないばこ)工の15業種にわたり総計120人に及んだ。本寮の職務内容はこれによってうかがわれる。本寮の職務は木工寮(もくりよう),修理職(しゆりしき)と重複するところもあり,後にはややその職の範囲はせばめられた。明治以降復活したそれは皇室財産中の建物を管理したが,第2次大戦敗戦後消滅した。
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百科事典マイペディア 「内匠寮」の意味・わかりやすい解説

内匠寮【たくみりょう】

中務(なかつかさ)省所属の令外官。728年設置。多数の技術者を擁して宮中・朝廷の調度の作成などにあたった。職員は頭(かみ)・助(すけ)・大允(だいじょう)各1人,少允2人,大属(だいさかん)1人,少属2人,史生(ししょう)8人ほか。774年大蔵省典鋳司,808年中務省画工司,大蔵省漆部(ぬりべ)司を併合するなどして,15種・120人の工人が所属した。

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世界大百科事典(旧版)内の内匠寮の言及

【織物】より

…この結果,地方にも紋織の技術が普及し,織物の一層の発展をみるに至った。中央官庁では中務省所管の内匠寮(たくみのりよう)でも錦や綾や羅が生産されていたが,それらは内匠寮の職掌から考えれば衣料以外の装飾用裂地等であったとみられる。以上のような生産組織で作られた織物の内容は,正倉院の伝世品によってほぼ概要を知ることができる。…

※「内匠寮」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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