再婚禁止期間(読み)サイコンキンシキカン

デジタル大辞泉 「再婚禁止期間」の意味・読み・例文・類語

さいこんきんし‐きかん【再婚禁止期間】

待婚期間

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「再婚禁止期間」の意味・わかりやすい解説

再婚禁止期間
さいこんきんしきかん

女性が前婚解消または取消しの日以降、再婚を禁止される期間。待婚期間、寡居期間ともいう。日本の民法では、これを100日と規定している(民法733条1項)。

 再婚禁止期間は、2016年(平成28)6月の民法改正前には、前婚の解消または取消しの日から6か月とされていた(旧民法733条1項)。しかし、6か月の再婚禁止期間は不適切あるいは女性に対して不公平であるという声が多かった。すなわち、前夫の子か後夫の子かわからなくなるといっても、生まれてくる子の嫡出推定が重なるのは、前婚解消の日から100日までの間に再婚した場合に限られるのだから(民法772条は婚姻成立の日から200日後または婚姻の解消・取消しの日から300日以内に生まれた子を夫の子と推定している)、再婚禁止期間は100日で十分だという意見が一般的であった。さらに進んで、再婚禁止期間をまったく廃止すべきだという主張もされている。いくら法律で期間を決めても事実上再婚することまで阻止することは不可能であるし、離婚による前婚解消の場合には婚姻解消以前に同居をやめていることも多く、再婚禁止期間はかえって混乱を生むだけだというのがその理由である。そして、1996年(平成8)に法制審議会法務大臣に答申した「民法の一部を改正する法律案要綱」においては、前説がとられ、再婚禁止期間を100日に短縮するという本件規定の改正案が示されていた。

 以上のような状況において、最高裁判所は、2015年12月16日、大法廷判決によって、旧民法733条のうち、100日を超過する部分については、憲法14条1項(法の下の平等)および憲法24条2項(両性の本質的平等)に違反するとした。この判決は、同条の立法目的が「父性の推定の重複を回避し、もって父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことにある」としたうえで、「計算上100日の再婚禁止期間を設けることによって、父性の推定の重複が回避されることになる」ため、同条のうち「100日の再婚禁止期間を設ける部分は、憲法14条1項にも、憲法24条2項にも違反するものではない」とした。しかし、同条のうち「100日超過部分については、民法772条の定める父性の推定の重複を回避するために必要な期間ということはできない」とし、この部分は、「合理性を欠いた過剰な制約を課すもの」であって、憲法14条1項および憲法24条2項に違反するとした。

 この最高裁判所による違憲判決を受けて、政府は、民法733条を速やかに改正する旨を発表し、法務省も、離婚等から100日経過後の婚姻届の受理を認める旨の通知を発した。そして、2016年6月1日、民法の一部を改正する法律が成立し、女性の再婚禁止期間が6か月から100日に短縮された(同年6月7日公布・施行)。

[野澤正充 2016年9月16日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「再婚禁止期間」の意味・わかりやすい解説

再婚禁止期間
さいこんきんしきかん

女性が,離婚や夫の死亡などで婚姻を解消または取り消した日から再婚が禁止されている期間。待婚期間ともいう。生まれてくる子の父親が不明確になるのを避けるため,日本の民法ではこの期間を 100日と定めている(733条1項)。ただし,女性が前婚を解消もしくは取り消す際に懐胎(妊娠)していなかった場合,または女性が前婚を解消もしくは取り消したあとに出産した場合には再婚禁止期間の規定は適用されない。民法では,長らく再婚禁止期間を 6ヵ月と定めていたが,女性だけに婚姻の自由を制限することは法のもとの平等をうたう日本国憲法に違反するとして再婚禁止期間の見直しを求める声が高まっていた。また,DNA鑑定などにより血縁関係の特定が高精度で可能となったことなども,その動きをあと押しした。2015年12月,最高裁判所が再婚禁止期間のうち 100日をこえる部分については違憲とする判断をくだし,2016年3月には再婚禁止期間を 100日に短縮し,離婚時に妊娠していなかった場合は 100日以内でも再婚を可能とする改正民法案が閣議決定され,同年 6月に民法が改正された。(→婚姻制度

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知恵蔵mini 「再婚禁止期間」の解説

再婚禁止期間

女性が離婚や夫の死亡などで婚姻を解消または取り消した後、再婚を禁止される期間。離婚した女性が産む子どもの父親が前夫と再婚相手のどちらであるかが不明確にならないように設けられている。日本では、1898年に施行された民法(733条1項)で再婚禁止期間を6カ月と規定していたが、これを100日に短縮する民法改正案が2016年に閣議決定された。改正案では、女性が離婚時に妊娠していないことや、離婚後の妊娠であることが証明できれば、100日以内でも再婚が認められる。なお、離婚時に前夫の子どもを妊娠していた場合、出産すれば禁止期間内でも再婚を可能とする規定はこれまで通り継続される。

(2016-3-10)

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世界大百科事典(旧版)内の再婚禁止期間の言及

【再婚】より

…ただし,女子については,前婚の解消,または取消しの日から6ヵ月たたないと再婚できないものと定めている(民法733条1項)。この期間を,再婚禁止期間,待婚期間,寡居期間などという。戸籍担当者の過失などにより,733条に違反し,再婚禁止期間を経過しないで婚姻が行われた場合には,各当事者,その親族または検察官,当事者の配偶者または前配偶者より取消しの請求をすることができる(744条)。…

※「再婚禁止期間」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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