凍豆腐(読み)しみどうふ

精選版 日本国語大辞典 「凍豆腐」の意味・読み・例文・類語

しみ‐どうふ【凍豆腐】

〘名〙 豆腐を、冬の寒い時、戸外に出してこおらせ、乾燥させたもの。こおりどうふ。こうやどうふ。《季・冬》
蓬壺(1959)〈水原秋桜子〉「凍豆腐煮て佳き酒を尽しけり」

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改訂新版 世界大百科事典 「凍豆腐」の意味・わかりやすい解説

凍豆腐 (こおりどうふ)

豆腐を凍結,乾燥させた食品。凝(こごり)豆腐,凍(しみ)豆腐,あるいは紀州高野山で作りはじめたとして高野(こうや)豆腐とも呼ぶ。《本朝食鑑》(1697)などに寒夜の戸外で凍結させて作る方法が記されているが,現在では人工凍結法による製品がほとんどで,その90%までが長野県で生産されている。人工凍結法は1901年に開発され,以後品質の安定と通年生産が可能なため,この方法が普及した。29年にアンモニア膨軟加工法,さらに72年には梘水かんすい)法による膨軟加工が行われるようになって,調理性と品質はいちじるしく向上した。アンモニア法には公害問題もあったため,現在はその最終工程だけを改良した梘水法が採用されている。これは通常よりもやや低温,短時間で豆腐を作り,これを切って-15℃で急速冷凍後,-3℃で3週間放置熟成させる。これを解凍脱水,熱風乾燥したのち,重曹を主成分とする液を散布し乾燥して製品とするものである。凍豆腐は成分の50%程度がタンパク質で,栄養価も高く,消化もよいが,消費傾向は近畿54%,中国・四国18%,東北10%,関東6%と西高東低型を示す。一般に淡色甘みの多い含め煮にするが,汁の実やなべ物の具にしてもよい。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「凍豆腐」の意味・わかりやすい解説

凍豆腐
しみどうふ

凍(こお)り豆腐のこと。凍ることを凍(し)みるというところからの名称。とくに自然の寒気で凍らせてつくる伝統的な凍り豆腐をいう。東北地方や長野県など、冬の寒い地方でつくられる。工業的な凍り豆腐と異なり、膨軟加工をしていないので、湯もどしが必要。

河野友美・山口米子]


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百科事典マイペディア 「凍豆腐」の意味・わかりやすい解説

凍豆腐【こおりどうふ】

しみ豆腐とも。古来高野山で製出されたので高野豆腐ともいう。現在は長野県が主産地。もとは冬季極寒を利用し,簣子(すのこ)上に豆腐を並べて凍結させた後,乾燥して作ったが,現在では人工冷凍法によって製造。1972年から従来のアンモニア法による膨軟加工に代わって,重曹を主成分とする膨軟剤が用いられるようになり,湯もどしせずにそのまま調理できるようになった。うま煮,すしの具,精進料理などに使用。
→関連項目豆腐

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世界大百科事典(旧版)内の凍豆腐の言及

【凍豆腐】より

…豆腐を凍結,乾燥させた食品。凝(こごり)豆腐,凍(しみ)豆腐,あるいは紀州高野山で作りはじめたとして高野(こうや)豆腐とも呼ぶ。《本朝食鑑》(1697)などに寒夜の戸外で凍結させて作る方法が記されているが,現在では人工凍結法による製品がほとんどで,その90%までが長野県で生産されている。…

※「凍豆腐」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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