凧・紙鳶(読み)たこ

精選版 日本国語大辞典 「凧・紙鳶」の意味・読み・例文・類語

たこ【凧・紙鳶】

〘名〙 細くけずった竹や木を骨組みにして紙や布などをはったもので、糸を引きながら風を利用して空中に高く揚げるおもちゃ。形は菱(ひし)形、長方形のもののほかに奴(やっこ)だこ、とんびだこなど、また絵だこ、字だこなどがある。そのほか中国の龍だこ、西洋の箱形だこなどきわめて種類が多い。たこのぼり。いかのぼり。いか。《季・新年‐春》
※俳諧・桃青三百韻附両吟二百韻(1678)「物の名も蛸や故郷のいかのぼり〈信徳〉 あふのく空は百余里の春〈芭蕉〉」
随筆・北越雪譜(1836‐42)二「江戸の児曹(こども)が春の遊は、女児は繍毬(てまり)羽子擢(はごつき)男児紙鴟(タコ)を揚ざるはなし」
[語誌](1)「十巻本和名抄‐二」に「紙老鴟〈略〉此間云師労之」と音読したことが知られるが、この後近世に至るまで用例が見いだせない。
(2)「物類称呼‐四」には「紙鳶 いかのぼり」の見出しで、「畿内にて、いかと云、関東にて、たこといふ〈略〉長崎にて、はたと云」とあり、当時はイカノボリが標準的であった。

いか‐のぼり【凧・紙鳶】

〘名〙 (「烏賊(いかのぼり)」の意) 凧(たこ)。もと、その形がイカに似たものが多かったところからいったが、今では方形円形、大小各種ある。主に関西などでいう。いか。いかご。《季・新年‐春》
破提宇子(1620)七段「童部共のもてあそび烏賊籏(イカノボリ)とやらん云物をこしらへ」
[語誌]「十巻本和名抄」に「紙老鴟 弁色立成云〈世間云師労之〉以紙為鴟形風能飛一云紙鳶」とあるように、漢語の紙老鴟をシラウシと音読した例があり、凧(たこ)が古くから日本に存在したことが知られるが、その後、江戸時代まで凧を記した文献はなく、用途や語形の変遷は明らかではない。

いか【凧・紙鳶】

〘名〙 (「いかのぼり(凧)」の略) たこ。《季・春》
浮世草子好色一代男(1682)一「同じ友どちとまじはる事も、烏賊(イカ)のぼせし空をも見ず」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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