分離(読み)ぶんり(英語表記)separation

翻訳|separation

精選版 日本国語大辞典 「分離」の意味・読み・例文・類語

ぶん‐り【分離】

〘名〙
① 分かれはなれること。また、分けはなすこと。
往生要集(984‐985)大文一「一切身分、分分分離」
米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉一「街路縦横にして、人行を妨害せんを慮り、乗車を分離し」 〔戦国策‐秦策〕
生物学で、メンデルの法則において、雑種の生物が子を生じる時、一代目の雑種の時に隠れていた、もとの形質が一定数の割合に出現すること。
③ 特定の電波や物質などを分けてとり出すこと。
舎密開宗(1837‐47)内「分離は異類分に分れて硫酸と鉄とに為るを謂ふ」

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デジタル大辞泉 「分離」の意味・読み・例文・類語

ぶん‐り【分離】

[名](スル)
分かれて離れること。また、分けて離すこと。「ドレッシングの油が分離する」「中央分離帯」「政教分離
結晶・昇華・蒸留などにより、ある物質を分けて取り出すこと。
分離の法則」の略。
[類語]分裂分解解体独立離す離れる外す分ける分かつ切り離す断ち切る分かれる割れる外れる離脱分割四分五裂遊離隔たる遠ざかる遠のく離隔隔絶乖離かいりちぎれる張り裂ける

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「分離」の意味・わかりやすい解説

分離
ぶんり
separation

(1)混合物を純物質に分けること。(2)純物質の中の化学成分を検知すること。

 (1)の一般に混合物から純物質を取り出す操作は、物質の精製といわれる。精製の手段は被検体および目的とする純物質の状態や特性によって異なる。たとえば次のような分離法がある。

[下沢 隆]

蒸留

液体試料中の不純物を分離する手段。常圧蒸留減圧(真空)蒸留、水蒸気蒸留などがある。試料の沸点が高い場合に減圧したり、水蒸気とともに蒸留したりする。

[下沢 隆]

再結晶

固体状態の混合物の分離に用いられる。一般に物質の溶解度にはさまざまな特性がある。たとえば、砂糖と食塩との混合物の精製には、アルコールを用いた再結晶法が用いられる。アルコールはイオン性物質である食塩を溶かさないが、分子性物質である砂糖を溶かすからである。

[下沢 隆]

抽出

液体溶媒を用いて固体または液体の中からある物質を分離して取り出す操作。酸・アルカリを用いて化学変化させる場合と、単に溶解させて抽出する場合があり、液体からの抽出には分液漏斗(ろうと)、固体からの抽出にはソックスレー抽出器を用いる。

[下沢 隆]

クロマトグラフィー

適当な吸着剤の入った筒の中に、分離精製する試料を注ぐと、吸着剤と試料との親和力の差のために試料の各成分が別の箇所に分配される分離手段。充填(じゅうてん)剤(たとえばシリカゲル)を濾紙(ろし)にかえたものがペーパークロマトグラフィーで、アミノ酸の分離に用いられている。

[下沢 隆]

遠心分離

タンパク質や生体物質の分離に用いられる。分子量の差を利用し、超遠心分離機により分離する手段である。

[下沢 隆]

電気的方法

電気分解やイオン交換法などがこの手段の代表例である。

 (2)の物質中の化学成分の分離は、特別な場合を除けば安定な形では取り出せないので、実際上は「成分の確認」を意味する。この手段には破壊法と非破壊法とがあり、前者の代表例が質量分析器であり、後者には分光法やポーラログラフィーなどがある。

[下沢 隆]

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図書館情報学用語辞典 第5版 「分離」の解説

分離

書誌的な関係を表す用語で,『日本目録規則1987年版改訂3版』用語解説によれば,“一つの逐次刊行物が,複数に分かれること.分離には,新しいタイトルの逐次刊行物を派生(separate)させる場合と,分離の結果すべてが新しいタイトルとなる分割(split)の場合とがある.リンクづけをしたデータベースを構成する場合は,前者のみを分離の範囲に含め,後者は,継続の一種とみなすことがある.”

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「分離」の意味・わかりやすい解説

分離
ぶんり
dissociation

精神医学用語。心の働きにおいて中心的な役割を果している連合が機能的に妨げられてしまうこと。その結果忘却が生じたり,自動的に手足が動いたり,一部の観念が人格ないし意識から遊離したりする。催眠時のトランス自動書記,精神分析の抑圧の現象も分離の一つ。多重人格 (→二重人格 ) はその著しい例とみられる。

分離
ぶんり
segregation

交雑実験で,雑種第1代 ( F1 ) 同士のかけ合せにより,雑種第2代 ( F2 ) で劣性の形質を示す個体が現れてくることをいう。 F1 ではすべてヘテロ ( Aa ) の遺伝子型であったものが,F2 で,優性遺伝子を含む個体 ( AA および Aa ) と,これを含まない劣性ホモ個体 ( aa ) に分離したため,劣性形質が表面に出るのである。

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岩石学辞典 「分離」の解説

分離

固体岩石が部分的に熔融した場合には,熔融した部分は鉱物粒の間を埋めた状態となる.これらの小さい液滴が濃集して次第に大きなマグマ塊が形成されるためには,細かい熔融部分が母体から分離して大量に濃集する機構が必要である.このためには濾過(filtration)や分離(separation)などが考えられているが,詳細はよく分かっていない.従来からこの機構は大別して,熔融した場所で分離濃集する場合と,マグマの移動に伴って分離濃集が行われる場合とが考えられており,両者ともに分化作用として取り扱われている.前者は沈積作用などの静的な機構で,後者は流動分化作用などの動的な機構として扱われている.

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普及版 字通 「分離」の読み・字形・画数・意味

【分離】ぶんり

わける。

字通「分」の項目を見る

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