切立(読み)きりたて

精選版 日本国語大辞典 「切立」の意味・読み・例文・類語

きり‐たて【切立】

〘名〙
① 切りはじめること。また、切りはじめたもの。切ってから間のないこと。また、そのもの。
※鏡子の家(1959)〈三島由紀夫〉二「固い切符の紙の、新鮮な切り立ての小口の感じが指に触れつづけてゐて」
蹴鞠(けまり)の懸(かかり)の木で、根を切り落としたもの。通常の鞠場ではなく、臨時に鞠場を作る際に用いる。
古今著聞集(1254)一一「仁治の比、仁寿殿の東向の御壺に、賀茂神主久継に仰せて、切立をせられて、つねに御まり有りけるに」
③ 庭の植込み
※大弐集(1113‐21)「おなじ人おなじ殿のひんがしおもてにきりたてをしおきて二三日まゐらぬ程に花のさきたれば」
④ 能舞台の橋懸(はしがかり)の前に立てる松。
衣服類が仕立てて間のないこと。また、その衣服類。新調。切り下ろし。
四河入海(17C前)一四「斬新と云は小袖なんどの新をきりをろしと云い、又きりたてと云類ぞ」
遊女などが、時間ぎめの客を帰すこと。
※雑俳・俳諧觿‐三〇(1831)「ちとあちらへと切立に茶を二つ

きっ‐たて【切立】

〘名〙
① 切りたてたように垂直にそびえていること。
歌舞伎松栄千代田神徳徳川家康)(1878)六幕「本舞台上手へ寄せて、見上げる程の切立(キッタテ)屏風岩
② 竹または松を切り、立てて飾りとすること。
※北山殿行幸記(1408)「きっ立の松四本に」
③ 仕立て上がったばかりの衣服などをいう。仕立ておろし。
※洒落本・部屋三味線(1789‐1801頃)「人の裁立(キッタテ)のいもじをとりちがへたふりで」
④ 梁(はり)などの重いものを支えるために設けた押角(おしかく)、または丸太の柱をいう。〔改訂増補日本建築辞彙(1931)〕

きっ‐た・つ【切立】

(「きりたつ(切立)」の変化した語)
[1] 〘自タ四〙 まっすぐにそびえ立つ。直立する。切り立つ。
※詩学大成抄(1558‐70頃)二「江のそばに岸あり。きつ立てそびえたぞ」
※満韓ところどころ(1909)〈夏目漱石〉八「高いオベリスクが、白い剣の様に切っ立って」
[2] 〘他タ下二〙 そびえ立たせる。直立させる。
※玉塵抄(1563)五「かべのきったてた如なぞ」

きり‐た・つ【切立】

[1] 〘自タ五(四)〙 山肌や崖(がけ)などが、刃物で切ったように鋭い傾斜でそびえ立つ。
太平記(14C後)二八「城の構密(きび)しく峯高く切立たれば、打入るべき便もなく」
[2] 〘他タ下二〙 ⇒きりたてる(切立)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の切立の言及

【蹴鞠】より

…懸は付近の建物より2間半以上離れた位置に,4本の木を3~4間を隔てて相対して立てるのを定めとする。木はもっぱらヤナギ,サクラ,マツ,カエデの4種で,これを4本懸といい,根のまま植えつけたのを本木(ほんぎ)とよび,根を切って埋め立てたのを切立(きりたて)というが,いずれも高くけあげる鞠長(まりたけ)の関係から1丈5尺以上として,下枝は演技者の烏帽子(えぼし)のとどく程度とした。また庭上には猫搔(ねこがき)というわらで編んだむしろを敷いて風雨にそなえた。…

※「切立」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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