別符(読み)ベップ

デジタル大辞泉 「別符」の意味・読み・例文・類語

べっ‐ぷ【別符/別府】

平安末期に成立した土地制度の一形態で、荘園に付属する一部区域が国司免符などによって独立的な状態になったもの。地名化したものもあり、大分県別府はその代表例。べふ。

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改訂新版 世界大百科事典 「別符」の意味・わかりやすい解説

別符 (べっぷ)

平安末期から鎌倉期に見られる土地制度上の地域呼称。本来の荘園に付随する地域と,本荘とは別に国司免符や院庁下文等(別納の符)を申請者にあたえて開発させ,独立的性格の所領とさせたもので,多くは〈一色別符〉すなわち所当・公事のうち所当一色を徴納した。1124年(天治1)美濃国茜部荘を領する東大寺が,〈くだんの牓示の内をもって光国私領鶉郷の別符と号し,ひとえに押領するところなり〉と源光国を非難したように,所領の拡大手段ともされ,また肥前国松浦荘が,筑前守国兼の私領から鳥羽院庁下文で別符とされ,ついで牓示を打ち立券荘号の手続がとられたように,私領の荘園化の過程でも成立した。地域的にはとくに九州地方に多く,宇佐宮領や弥勒寺領には,それぞれ十数ヵ所の別符が確認される。宇佐宮領ではとくに日向国に多い。大分県の別府市の名は宇佐宮領石垣別符に由来する。
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百科事典マイペディア 「別符」の意味・わかりやすい解説

別符【べっぷ】

平安時代末期から鎌倉時代,荘園や公領で本来の支配領域に付随する地域を,別納(べちのう)徴符や国司免符(こくしめんぷ)を与えて新たに開発させ,独立した単位の所領としたもの。別符は本来別納徴符などの文書を意味したが,次第に別納が認められた土地そのものを指すようになった。主に所領の拡大手段として利用され,また私領の荘園化の過程で成立した。とくに九州地方に多くみられる。
→関連項目飾磨津

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「別符」の意味・わかりやすい解説

別符
べっぷ

「べふ」「びゅう」などともいう。平安時代末期に成立した土地制度の一つで、国衙(こくが)が特別の符宣をもって成立させた特別区域

[編集部]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「別符」の解説

別符
べっぷ

別府とも。別納(べちのう)の徴符や免符によって成立した中世的な収取形態の一つ。別納とほぼ同義。本来は別納の徴符や免符のことを意味した。のちには収取の形態あるいは収取単位としての土地をさした。史料には11世紀半ばから登場し,その実態は「別符の名(みょう)」としての別名(べつみょう)と同じものである。すなわち,本名に対して新たに成立した収取単位を意味した。広く各地に成立して,のちに地名化した。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「別符」の意味・わかりやすい解説

別符
べっぷ

平安時代末期~鎌倉時代に成立した土地制度。別府,弁分とも書き,「べふ」「びゅう」とも読む。その成立過程,語義はまだ定説はないが,11世紀以降国衙 (こくが) から恩典を与えられて新開した地といわれる。その地は別符保,別符名と呼ばれ,国衙領,私領の2面性を有した。別符は各地に成立したが,地名化した代表的なものに大分県の別府市がある。

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