前田育徳会(読み)まえだいくとくかい

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「前田育徳会」の意味・わかりやすい解説

前田育徳会
まえだいくとくかい

旧加賀藩主前田家が代々収集した膨大な典籍,美術工芸品などが寄贈され,1926年育徳財団として設立された財団法人。「育徳」とは,本郷の東京大学の敷地内にあった前田家上屋敷内の育徳園 (通称三四郎池) から命名された。 49年現名称に改称。東京都目黒区駒場に所在。研究者の資料閲覧などの便宜をはかる機関として,5代藩主前田綱紀の蔵書名から名づけられた「尊経閣文庫」を運営する。伏見,花園,後醍醐天皇の多数の宸翰を含む他に類例をみない『三朝宸翰』,陽明文庫,東京国立博物館蔵と並び,現存する唯一の編集当時 (1058~69) 頃の写本,または原本とされる『歌合』,紀貫之直筆本から直接転写し原型を伝えるものとして重要な藤原定家写本の『土佐日記』をはじめ,『万葉集』巻第三,第六残巻,『日本書紀』『古今集』『入道右大臣集』『類聚国史』『仁和寺御室御物実録』『賢愚経残巻』『宝積経要品』などの書籍・典籍 19点,無銘正宗 (名物太郎作正宗) などの太刀,刀3口の計 22点の国宝を所蔵する。

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世界大百科事典(旧版)内の前田育徳会の言及

【尊経閣文庫】より

…加賀前田家伝来の典籍文書その他の文化財を護持し(和書7500部・漢籍4100部。国宝 王羲之《孔侍中帖》等22点,重文 《釈日本紀》等72点),財団法人前田育徳会が運営する。前田家5代松雲公(しよううんこう)綱紀(つなのり)(1643‐1724)は,書誌学者と言ってもよく,和漢韓・写本刊本諸種の貴重な典籍文書を蒐集しあるいは影写し,それが今日,文庫の中核であって,庫名も綱紀が自分の代の収穫について尊経閣の名を付けたのを拡張応用した。…

※「前田育徳会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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