剥片石器(読み)はくへんせっき

精選版 日本国語大辞典 「剥片石器」の意味・読み・例文・類語

はくへん‐せっき ‥セキキ【剥片石器】

〘名〙 打製石器一つ石塊打撃を加え剥ぎとった薄い自然剥片に加工したものと、剥片を得る意図で打ちかいた作出剥片に細工したものとがある。旧石器時代以後、石器時代を通じて用いられた手法石核石器に対する語。フレイク。

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百科事典マイペディア 「剥片石器」の意味・わかりやすい解説

剥片石器【はくへんせっき】

原石から剥(は)ぎ取った石片を加工した石器。原石を調整し,それに石・角・骨などのハンマーで打撃を加えて同じ規格の石片を作り出す石刃技法によって素材を得る。この技法ヨーロッパ後期旧石器時代オーリニャック文化期に出現する。日本列島では後期旧石器時代からナイフ形石器尖頭器細石器・スクレーパーなどさまざまな剥片石器がつくられた。→打製石器
→関連項目アシュール文化アブビル文化沙苑文化石刃石器ソアン文化丁村遺跡茂呂遺跡

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「剥片石器」の意味・わかりやすい解説

剥片石器
はくへんせっき

薄く剥(は)がされた石片(剥片)を素材としてつくられた石器で、石核石器と対比される。中期旧石器時代から新石器時代にかけて多用され、わが国では先土器時代から縄文時代の利器に顕著である。剥片石器の種類としては、ナイフ形石器(切ったり突き刺すための道具)、彫器(ちょうき)(溝(みぞ)を掘ったり刻むための道具)、掻器(そうき)・削器(さっき)(掻(か)きとったり削るための道具)、尖頭器(せんとうき)・石槍(せきそう)(突き刺すための道具)、揉錐(もみきり)器(穴をあけるための道具)、石鏃(せきぞく)(矢の先端)などがあげられる。以上のような、剥片に調整加工を加えて道具につくりあげるもののほかに、剥片をそのまま使用した例も少なくない。

戸沢充則

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「剥片石器」の解説

剥片石器
はくへんせっき

石核(せっかく)から剥離された剥片を素材とし,これに細かな調整加工を施して利器に仕上げた石器。剥片を利器として使用した例は前期旧石器時代にさかのぼるが,その普及は中期旧石器時代・旧人段階にある。薄く鋭い刃部をもち,利器としての効率は高い。石刃(せきじん)は剥片石器の最も発達したもので,さまざまな手法による調整加工を加えて多様な形態の石器が作りだされた。掻器(そうき)・削器(さっき)・彫器(ちょうき)・石錐(せきすい)などの加工具は世界的に存在するが,ナイフ形石器や尖頭器(せんとうき)のような狩猟具は地域的に偏っている。日本列島では旧石器末期の尖頭器文化以降,両面調整技術がおおいに発達し,縄文時代の石鏃をはじめとする新しい道具の製作・普及の基盤となった。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「剥片石器」の意味・わかりやすい解説

剥片石器
はくへんせっき
flake-tool

打製石器の一種。打製石器は基本的に石核石器と剥片石器とに大別することができる。石材の外面を打剥加工して中身を石器に仕上げる前者に対し,剥片石器は石材の外面を次々に打剥した剥片をそのまま,あるいは整形加工を加え,鋭利な側縁を刃器として用いた石器。剥片石器は旧石器時代の初頭から新石器時代にいたるまでみられるが,その作製技法には非調整打面,亀甲状石核,円盤状石核,円錐ないし円筒状石核などとさまざまな発達段階が識別されるので特に重要である。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「剥片石器」の解説

剥片石器(はくへんせっき)

石核(せっかく)石器に対して,石材から剥(は)ぎとった薄片を利用してつくる石器で,石刃(せきじん),石匕(せきひ),ビュラン(刻刀),ポイント(尖頭器)などを主体とする。動物の肉の処理や骨角器,木器の製作に用いられた。

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