加藤景正(読み)かとうかげまさ

精選版 日本国語大辞典 「加藤景正」の意味・読み・例文・類語

かとう‐かげまさ【加藤景正】

鎌倉前期の伝説的な陶工。長尾瀬戸焼陶器)の中興の祖。正式名は加藤四郎左衛門景正。号は春慶通称藤四郎。名は景政とも書く。貞応二年(一二二三)僧道元に従って宋に渡り製陶法を修得帰国後、瀬戸に窯(かま)を開いたといわれる。その遺作を「古瀬戸」「春慶焼」と称する。以後、藤四郎の名は代々継承された。生没年未詳。

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デジタル大辞泉 「加藤景正」の意味・読み・例文・類語

かとう‐かげまさ【加藤景正】

鎌倉時代の伝説的な陶工。京都の人。正式には加藤四郎左衛門景正という。通称、藤四郎。入道して春慶と号した。道元に従って宋へ渡り、製陶法を学んで帰国。尾張の瀬戸に窯を開いたとされ、瀬戸焼また陶工の祖といわれる。藤四郎景正。生没年未詳。→藤四郎

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改訂新版 世界大百科事典 「加藤景正」の意味・わかりやすい解説

加藤景正 (かとうかげまさ)

瀬戸焼の開祖と言い伝えられてきた伝説的陶工。正式名を加藤四郎左衛門景正といい,略して藤四郎とも称される。生没年不詳。伝承によれば,彼は道元禅師に従って中国に渡り,1227年(安貞1)に帰国して瀬戸に中国の製陶法を伝え,自らも窯をきずいたという。瀬戸には景正をまつる陶彦(すえひこ)神社があり,近くの庚申山頂には1867年(慶応3)に建立の彼の顕彰碑があり,後世の陶工たちの崇敬ぶりをよく示している。しかし,彼が実在したことを証明する資料はなく,その実績を明らかにすることは至難である。現在のところ1675年(延宝3)に土佐高知の陶工森田久右衛門が日記に詳しく彼の事績をしるすのが史料としての初見である。ただし,瀬戸窯が中国陶磁にならって施釉陶を焼く唯一の窯として発足するのは13世紀前半であることが,考古学的研究から確かめられており,当時まさに景正に象徴されるような進取の気風に富む陶工がいたことは推察できよう。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「加藤景正」の意味・わかりやすい解説

加藤景正
かとうかげまさ

生没年など不詳。愛知県の瀬戸焼の陶祖。正しくは加藤四郎左衛門景正といい、藤四郎と称する。加藤景正が実在したという確かな証拠はない。文献では江戸前期1678年(延宝6)の『森田久右衛門日記』に、瀬戸焼は藤四郎が根元であり、鎌倉将軍2、3代目(源頼家(よりいえ)・実朝(さねとも))の事とし、450年ほど前の人物と記しているのが最初例である。これは、藤四郎が1223年(貞応2)に入宋(にっそう)した道元禅師に従って渡航し、陶技を学んで帰国したとする伝承と、ほぼ時期は一致する。確かに鎌倉時代の瀬戸焼は中国陶磁を写して開窯するが、専門的技術では中国陶磁と異なる。しかし考古学調査では、景正の入宋時期と開窯時期がおおむね一致している。

[矢部良明]

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百科事典マイペディア 「加藤景正」の意味・わかりやすい解説

加藤景正【かとうかげまさ】

瀬戸焼の陶祖と称される伝説的人物。加藤四郎左衛門景正,略して藤四郎(とうしろう)という。1223年道元に従って中国に渡り,陶法を習得し,帰国後瀬戸に良土を発見して製陶したといわれる。
→関連項目古瀬戸

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「加藤景正」の解説

加藤景正
かとうかげまさ

生没年不詳。鎌倉時代に瀬戸焼を開いた陶祖とされる伝説的人物。加藤四郎左衛門景正といわれ,略称藤四郎。1223年(貞応2)に道元に従って中国に渡り,陶磁の技法を伝えたという。「森田久右衛門日記」延宝6年(1678)条には「瀬戸焼物と申者(もうすは),藤四郎根元。但四百五拾年余ほど,鎌倉二三代め事」と記す。瀬戸焼の開窯は13世紀前半であり伝承と一致するが,瀬戸焼に中国陶磁技術が反映されていないことも確かである。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「加藤景正」の解説

加藤景正 かとう-かげまさ

?-? 鎌倉時代の陶工。
瀬戸焼の陶祖とつたえられるが,実在の人物かどうかたしかでない。伝承によれば,道元にしたがって宋(そう)(中国)にわたり,帰国してその製陶法を瀬戸につたえ,みずからも窯をひらいたという。通称は藤四郎,四郎左衛門。号は春慶,俊慶。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「加藤景正」の意味・わかりやすい解説

加藤景正
かとうかげまさ

[生]?
[没]建長1(1249).3.19.
鎌倉時代前期の陶工。加藤四郎左衛門景正といい,通称の藤四郎は代々継承された。号は春慶。貞応2 (1223) 年僧道元とともに入宋,製陶法を修め,帰国後尾張の瀬戸に窯を開いたという。遺作を「古瀬戸」「春慶焼」と称する。

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旺文社日本史事典 三訂版 「加藤景正」の解説

加藤景正
かとうかげまさ

生没年不詳
鎌倉時代の陶工
通称藤四郎。伝記不詳。一説に1223年道元に従って入宋。陶法を学んで帰国後,尾張国瀬戸に良土を発見し開窯したと伝える。陶工の祖と呼ばれ,子孫も代々藤四郎を称す。

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