労働審判(読み)ろうどうしんぱん

知恵蔵 「労働審判」の解説

労働審判

解雇や給料未払いなど職場の争いごとを、訴訟よりも素早く解決するために2006年4月から導入された。裁判外紛争解決手続き(ADR)の一種で、地裁に申し立てることができる。 労働者、使用者のそれぞれの専門家である労働審判員と、裁判官が務める審判官の計3人でつくる「労働審判委員会」が、トラブルが起きた会社と個人の双方の話を聞いて、原則3回以内の期日決着を図る。 調停が成立しなかった場合は「解決案」として委員会が審判を示し、確定すれば裁判上の和解と同じ効力を持つ。当事者に異議があれば訴訟に移る。 最高裁によると、07年3月までの1年間に全国で1163件の申し立てがあった。手続きが終了したのは919件。半数近い454件が地位確認、247件が賃金など、71件が退職金をめぐる争いだった。 終了したうちの7割に当たる644件で調停が成立し、162件で解決案を示す審判が出た。審判の内容に異議があって訴訟に進んだケースなどを除くと、全体の8割以上が「解決」したことになる。 申し立てから終了までの期間をみると、7割に当たる655件が3カ月以内で済んでおり、ほとんどが3回以内の期日で収まった。裁判よりも迅速に進んでいるといえる。 企業の労務担当や、労働組合の幹部ら「現場」を知る専門家が審判員となることで、利用者だけでなく裁判官にもおおむね好評だ。ただ、書類作成などの手続きをする代理人弁護士に頼むことで、争う金額が少額な割に費用がかかることなどが、今後の課題として挙げられている。

(岩田清隆 朝日新聞記者 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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